表面実装技術をベースとした高密度実装化技術の進展により、電子機器の小形化、薄形化、軽量化が急速に進んでいる。電子部品においては一層の小形化・高周波化対応が求められると共に、環境問題への配慮も欠かすことのできない課題として重要視されている。
 アルミ電解コンデンサは、これらの要求に加えて高密度実装化、面実装化ニーズがいちだんと高まっており、チップ品の小形化、薄形化対応が急務となっている。また、リード形及び基板自立形アルミ電解コンデンサにおいても小形化に加え、さらなる高機能化が求められている。以下、アルミ電解コンデンサについて、当社の製品を例に最近の技術動向を述べる。

   表面実装技術(SMT)や表面実装部品(SMD)といったテクノロジーがエレクトロニクス機器の高性能化、小形化、薄形化を支えており、アルミ電解コンデンサのチップ化に拍車をかけている。チップ形アルミ電解コンデンサは、高耐熱の電解液と封口ゴムを採用したアルミ電解コンデンサのディスクリート品に、装着時の安定性と耐熱性を保護するために樹脂形成板(座板)を取り付けた構造になっており、これによってリフローはんだ付けが可能となった。この形状は今日のチップ形アルミ電解コンデンサの主流となっている。
 チップ品に求められているのは更なる小形化であり、当社は特に小形低背化に取り組んできた。当初、高さが6.0mmであったチップ形アルミ電解コンデンサを、順次低背化し、1999年には高さ3.95 mmL品「ZRシリーズ」を開発。さらに今年4月には、業界最低背の3.0mmL品「ZDシリーズ」の開発に成功した。これまでの低背化の進展を図.1に示す。
 
     
 
図.1 チップ形アルミ電解コンデンサの低背化
 
     
 チップ形アルミ電解コンデンサの低背化を実現させるためには、電極箔の細幅化による素子の薄手化が不可欠であるが、製品全体に占める電極箔の収容面積が小さくなると高容量化を確保することが難しくなる。そこで、単位面積あたりの容量が、より大きい電極箔を開発するため、電極箔のエッチング、化成技術の改良を進めてきた。また、製品の低背化に伴う封口材の薄形化を実現するために、封口材の硬度及び耐熱性を向上させた封口材を採用した。さらに、極細電極箔のスリット加工、素子巻き取り、端子取り付けに至る一連の組立加工において、高精度な専用設備を開発することなどによって実現している。

   
   
  電源平滑回路用超低インピーダンスアルミ電解コンデンサ
「HNシリーズ」
 
     
   電子機器の小形化薄形化に伴い、アルミ電解コンデンサの小形化要求が高まっていることは先にも述べたが、デジタル化が進む中、高性能化も重要な要素として求められている。それを可能とするのが、低インピーダンス化、高リプル対応化、長寿命化、高温度対応化等、より優れた性能を持つコンデンサであり、このようなニーズに対応すべくさらなる特性向上に向けて研究、開発が進められている。

 
   
  図.2 電源用コンデンサに求められる要素  
     
 
図.3 インピーダンス特性の比較
 
     
 
図.4 超低インピーダンスアルミ電解コンデンサ
 
     
   VRM(Voltage-Regulator-Module)等の電源には、図.2に示すように高許容リプル電流、低ESRという性能を兼ね備えたコンデンサが必要になってくる。当社は、これまでスイッチング電源用低インピーダンス品として「PWシリーズ」を開発し、好評を得てきた。「PWシリーズ」は、電導度を高めたアミジン系電解液の開発により低インピーダンス化を実現したものである。しかし、さらなる低インピーダンス化が求められる中、アミジン系電解液の高電導度化には限界があるため、新たな電解液と電極箔の開発が不可欠となった。そこで開発したのが、水系電解液と称されるエチレングリコールと水を主成分とした電解液である。これまで、電解液中の水分には電極箔の性能を著しく劣化させ、また電解液の耐久性を維持できなくなるとされてきた。しかし、高電導度化が可能でありインピーダンス低減が期待されることから、電極箔の侵食を抑え、かつ耐久性を向上させる水系電解液の開発と、耐水性を向上させた電極箔の開発に取り組んだ結果、開発に成功。水系電解液を採用した「HDシリーズ」は「PWシリーズ」に比べインピーダンスを40%低減している。その後、電解液、電極箔のさらなる改良に努め、「PWシリーズ」に比べインピーダンスを70%低減させた「HCシリーズ」を開発し、高まる低インピーダンス化への要望に応えてきた。さらに高電導度の電解液、高安定電極箔の開発は加速化し、「HCシリーズ」と比較しインピーダンスを20%低減させた超低インピーダンス品「HMシリーズ」の開発を実現した。そして本年4月にアミジン系電解液と比べ約4分の1の低比抵抗水系電解液を開発し、HCシリーズ比45%の超低インピーダンスを図った「HNシリーズ」を開発した。図.3は各シリーズの高周波におけるインピーダンスの低減を示している。図.4は各シリーズの特長を簡略的に示している。「HCシリーズ」は、ケースサイズがφ4×7mmL〜φ10×16mmL、容量が最大1,000μFであり、大容量、小形化を実現している。
 一方、メンテナンスフリーに向けた長寿命品についても開発を進めている。従来高信頼アルミ電解コンデンサの耐久性は105℃5,000時間保証が一般的であったが、「HEシリーズ」は低インピーダンス特性を維持しつつ105℃10,000時間の長寿命化を実現した高信頼性品となっている。さらなる長寿命化を目指した「PXシリーズ」は、長期における蒸散が少なくかつ安定性の高い電解液、高温度下での耐久性が高い封口ゴム・電極箔を採用することにより業界に先駆けて105℃20,000時間保証の長寿命高信頼性化を実現している。これら2シリーズはアルミ電解コンデンサとしては実現が難しかったメンテナンスフリーのニーズに応えている。
 高温度対応品については、カーエレクトロニクス技術の進展と、ハイブリッドカーならびに電気自動車への関心を背景に、より高い耐熱性が求められている。車載用電子回路はこれまで車室内に搭載されていたが、最近ではエンジンルーム内へ移行されることが主流となってきた。当社は125℃対応の「BTシリーズ」に加え、さらなる高温度対応のニーズに応えるべく、150℃対応の「BXシリーズ」を開発した。高温での蒸散性をより小さく抑えた電解液、耐熱性を向上させた封口ゴム、エッチング倍率を上げつつも信頼性を高めたアルミ箔、弁膨張を抑制するために硬度を上げ環境対応も考慮したラミネートケースなどを採用することで、さらなる高温度化と高信頼性化を実現した。「BXシリーズ」の仕様は以下の通りである。ケースサイズはφ10×12.5mmL〜φ18×40mmLの9サイズ、カテゴリ温度範囲は−55〜+150℃、耐久性は150℃1,000〜2,000時間を有している。定格電圧範囲は10〜35V、定格静電容量範囲は1〜4,700μFをカバーしている。
 今後、モバイル市場のさらなる拡大が期待される。モバイル機器に搭載されるコンデンサには、小形化・薄形化・軽量化が求められると同時に、高許容リプル電流化が要求されている。このような要望に応えて、当社は「PTシリーズ」を開発した。同製品は高容量高安定アルミ箔、ならびに高耐圧高電導度電解液を採用しており、スイッチング電源用小形品「PSシリーズ」と比較し、20〜25%の小形化、75〜135%の高許容リプル電流化を実現した。また、105℃10,000時間保証の長寿命品「CAシリーズ」は「PTシリーズ」に並んでスイッチング電源及び照明器、電源アダプターの入力平滑用コンデンサとして強く要求されている小形長寿命化と高許容リプル電流化を同時に実現させた製品である。

 
     
     

   地球環境問題が大きく取り上げられている現在、ダイオキシン問題、鉛問題がクローズアップされており、企業においては早急な対応を迫られている。当社は、これらの問題の重大性を早くから認識し、全製品において環境に優しい配慮を行なうと共に、生産時に発生する環境汚染物質、廃棄物による環境汚染問題の対策、紙の使用量の削減やリサイクル活動等を全社をあげて取り組んでいる。

 
@ダイオキシン問題
 ダイオキシンの発生を抑制する為には、発生源となる物質の削減とゴミ焼却炉の整備が重要である。通常アルミ電解コンデンサは定格表示を主目的に塩化ビニル(PVC)スリーブを外装に使用しているが、PVCは焼却時にダイオキシンを発生させる可能性があるということを重視し、当社ではチップ形はナイロンラミネートケースの採用、リード線形はポリエチレン(PET)スリーブまたはナイロンラミネートケースの採用、基板自立形はPETスリーブまたはポリオレフィンスリーブの採用により地球環境に優しい製品開発を推進している。
 
A鉛問題
   鉛問題もダイオキシン問題と同様に早急に解決しなければならない問題の一つである。廃棄された電子機器に使用されている鉛含有はんだ、鉛含有メッキから酸性雨により鉛が溶け出し、土壌、水質汚染を引き起こし生態系に深刻な影響を及ぼしている。鉛フリー化に関しては、はんだメーカー、材料メーカー、セットメーカー、電子部品メーカーなど、関連するメーカー、関連団体などが鉛フリー化に向けて研究開発に取り組んでいる。当社は、リード線のメッキ部分の鉛フリー化を目指し、これまでの錫−鉛合金によるリード線のメッキから鉛フリーはんだとの相性評価も高い錫100%または錫−ビスマス合金の鉛フリーメッキを採用したリード線の使用へ移行している。しかし、鉛フリーはんだを用いた場合、リフロー温度を上げる必要があることから、リフロー耐熱の対策が必要となってくる。これらの課題を十分に考慮にいれながら、製品の性能を維持した環境に優しい製品作りを目指している。
 
今後、デジタル機器・ネットワーク関連機器市場は急速に拡大していくことが予想される。市場が要求する電子部品は更なる小形化、高温度対応、高許容リプル対応、低インピーダンス化であることは申すまでもないが、当社はこのメガコンペティションの時代を勝ち抜く為、今後も市場のニーズに沿った商品開発を積極的に行い、ユーザーの期待に応えていく。

 
ニチコン株式会社 大野工場
技術部技術課  商品開発係 西野誠一

2002年7月1日  電波新聞掲載

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