世界的に環境問題意識の高まる中、ハイブリッドカー、燃料電池自動車用電源、太陽光発電、燃料電池発電といった高効率オンサイト型電源等が、次世代のクリーンエネルギー源として、従来にない規模と速度で開発が進められている。これらシステムの構成上不可欠な部品として使用される電気二重層キャパシタ及び大形アルミ電解コンデンサについて、その特長と技術動向の概要を述べる。

 今日のエレクトロニクス分野の著しい発展とともに、これらのエネルギー貯蔵源に対する要請もますます高度化している。加えて電力、自動車分野においても、エネルギー回生による省エネルギー化を目指したエネルギーシステムが期待されており、活性炭を電極に用いる電気二重層キャパシタ(以下EDLC)がエネルギーシステムの主電源として注目され、使用され始めている。これらが注目されている大きな要因は、急速充放電特性は勿論であるが、充放電サイクル寿命の長さである。
 エレクトロニクス分野におけるEDLCは、メモリーなどのバックアップ電源デバイスとしてコイン形など、従来から小形のものが多く使用されてきた。しかし最近では電子機器の使用するエネルギー容量が大きくなってきたことから、EDLCの高容量、高電圧化などが求められてきている。また、車輌などの動電力高出力に対するエネルギーデバイスとしては、高エネルギー密度、低内部抵抗、充放電サイクル寿命の長寿命化が求められている。これらに対応するため、活性炭や電解液などの材料開発、デバイス化技術の開発等が重要となっている。ここでは、デバイス化技術の動向を記す。

◆電極技術
 EDLCは、活性炭電極と電解液との界面に生じる電気二重層を誘電体として使用するデバイスである(図1)。活性炭は粉末状であるため、電極構造と製造技術が重要である。電気二重層電極は、活性炭、バインダー、集電電極となるアルミ箔などから構成され、活性炭の原材料が製品特性に与える影響が大きく、材料メーカーの開発に期待する部分が大きいが、一方では電極製造技術が製品に与える影響が最も重要である。
 当社が独自開発した電気二重層電極製造技術は、活性炭を薄く、広く、安定した厚みでアルミ箔上に形成すること。さらに、従来技術ではバインダー成分が活性炭の表面細孔を塞ぎ、電気二重層容量を低下させていたが、新規バインダーの採用により製品の小形、高容量化が可能となった。
 上記の新規開発した電気二重層電極と当社がこれまでに培ってきたアルミ電解コンデンサの製造技術により、当社「EVer CAP」は、電気二重層電極電流密度100mA/F、2万回の急速充放電サイクル試験においても十分な性能を発揮し、1F(当社UCシリーズ:φ8×11.5(mm)L)を用いた実証試験において初期1Fに対し、試験後0.8Fと容量減少が少ないことを確認している。
 

◆直列接続技術
 近年、メンテナンスフリーを目的に、太陽光発電とEDLCとを組み合わせた製品が増加している。EDLCのセル電圧は1〜2.7Vであり、ほとんどの機器ではEDLCを複数個直列接続して高電圧化する必要がある。複数個のEDLCを直接接続して充放電を行うと、各EDLC間に充電ばらつきが生じるため、従来は別途専用保護回路などを設けて各EDLCへの分電圧を制御していた。今般当社は、別途専用保護回路を必要とせずに直列接続による高電圧化が可能な技術を開発した。これにより、一例であるが、定格300V/8mFのユニット化を可能とした。

◆低内部抵抗化技術
 車輌などの動電力用途では、高電圧、大容量、高出力のEDLCが求められている。高電圧、高出力対応のためには、EDLCの内部抵抗を低くする必要がある。これまで、低内部抵抗のEDLCは、素子を積層構造としたEDLCが多かった。しかし、積層構造は大容量化に問題があり、当社は大容量化が可能な捲回形で低内部抵抗化の開発に取り組んだ。当社はインバータ用アルミ電解コンデンサで培った高出力対応技術があり、同技術をベースに高容量で低内部抵抗を実現したEDLCへの応用展開によって低抵抗EDLCの製品化を実現した。
 EDLCの性能評価の一例として、体積エネルギー密度(Wh/L)に対する容量と内部抵抗の積(Ω・F)がある。高出力用途には容量と内部抵抗の積が小さい方がよく、当社開発品は、2.5Wh/Lで3Ω・F以下が可能である(図2)。
 動電力用途には、電源管理システムや周辺システムとの連携動作が必要であり、ユーザーニーズに合わせて取り組んでいきたい。
 

◆まとめ
 EDLCは、小形・大容量化、高電圧対応等高性能化が急速に進んでおり、次世代クリーンエネルギーシステムの発展に寄与するものと確信している。


〔2〕アルミ電解コンデンサ
 アルミ電解コンデンサは、陽極用アルミニウム箔表面に形成された酸化皮膜を誘電体として、陰極用アルミニウム箔が対向し、間に電解液を含んだセパレーター(電解紙)から構成(図3)されており、広範な電圧範囲で大容量が得られ、大量生産にも向いていることから、民生機器を中心に発展してきたコンデンサである。今後、市場拡大が見込まれる太陽光発電、燃料電池発電といったオンサイト型電源、ハイブリッドカー用電源など、新しいエネルギー分野においても需要の増大が期待される。しかし、これら分野に適合して行く上で要請の強い技術要素がいくつかあり、以下に要約して対応技術と共に述べる。
 

◆高電圧化
 インバータ電源用途における平滑用アルミ電解コンデンサの定格電圧は、インバータ回路を構成するIGBT耐電圧によって選定されており、従来、定格電圧400V〜550V品の単器又は直列接続が使用されてきた。昨今、IGBTの高耐電圧品開発が進められていることから、アルミ電解コンデンサの定格電圧については600V以上の高電圧が求められてきている。当社はこの高電圧ニーズに応えるため、昨年3月に世界初の定格電圧630V品(1000〜5600μF)を開発、量産を開始した。630V品の主たる開発要素は陽極箔と電解液である。アルミ電解コンデンサの耐電圧は、陽極箔に形成する誘電体酸化皮膜厚みによって決定されるが、エッチング処理により微細孔加工された電極面に形成されるため、高電圧用の厚い皮膜により微細穴が埋まらないよう穴寸法を適切にする必要がある。すなわち、高耐電圧化により静電容量を確保していくためには、同時にエッチング孔加工技術にも取り組み、皮膜厚みに対してエッチング孔径を考慮する事が重要になる(写真1)。
 また、耐電圧を確保するために電解液比抵抗を高く設計すると、内部抵抗も高くなり耐リプル電流性能や温度特性が悪化する。従って、使用薬品を検討し、耐電圧との兼ね合いから最適値を導いて採用している。現在、サンプル段階にある定格電圧750V品も量産ベースに移行するため、耐電圧性能の確保をはじめ、耐リプル電流性能及び温度特性を十分に考慮した開発を進めている。
 

◆高温度化
 ハイブリッドカーや燃料電池自動車は、ネジ端子形アルミ電解コンデンサを収めた電源をボンネット内部(エンジンルーム)に搭載することが一般的で、常に搭載部品の耐熱性向上が求められている。また、アルミ電解コンデンサの寿命は、アレニウスの法則に基づく「10℃2倍則」に従うことが知られており、機器の長寿命化設計のためにも高温度対応品が望まれていた。従来、ネジ端子形アルミ電解コンデンサの定格温度は105℃が上限であり、105℃以上の定格温度を実現するためには、構成材料の耐温度性能を向上させる必要があった。当社はこの高温度化のニーズに応えるべく、ネジ端子形アルミ電解コンデンサ125℃品「HTシリーズ」を商品化した(写真2)。高耐熱電極箔として開発した新たなエッチング箔に、高温度中の漏れ電流を極限まで低減化した高安定な誘電体酸化皮膜を持つ電極箔を採用。さらに長寿命品用に開発した高耐熱電解液を組み合わせることで実現している。図4は、定格温度仕様が105℃と125℃で異なる450V3900μFの製品を、125℃雰囲気温度中において連続印加試験を行い、ESR特性変化に注目した信頼性比較データである。従来の105℃品仕様では特性変化が大きいのに対し、125℃品は保証寿命である2000時間を超えても著しい変化はなく、安定性能を維持している。当然、定格温度125℃品を105℃環境で使用する場合、保証寿命を大幅に上回るロングライフ使用(理論上では105℃中8000時間使用で125℃使用と同等の寿命進行と推定される)を可能にすることから、太陽光発電システム、燃料電池等のオンサイト型電源における高信頼設計にも有用性が高い。
 
写真2 ネジ端子形アルミ電解コンデンサ「HTシリーズ」
 

◆車載対応
 当社は一昨年からハイブリッドカー用アルミ電解コンデンサを市場に供給している。同製品は、従来のネジ端子形アルミ電解コンデンサとは多くの点で異なり、自動車用途での使用に耐え得る設計を行っている。この開発ノウハウを技術ベースに、自動車用ネジ端子形アルミ電解コンデンサ「EVシリーズ」を開発した(写真3)。「EVシリーズ」は高温度環境下での熱安定性、耐サージ電圧、耐振性及び大電流対応といった自動車分野で求められる性能を一般品より強化している。電極箔には当社が高いシェアを有するインバータ電源分野向けアルミ電解コンデンサの開発で培ってきた電極箔技術をベースとし、陽極箔を低倍率で薄形設計することにより電極箔収容性を改善。スイッチング電流周波数に相当する10kHzでのESR(等価直列抵抗)を10%低減、誘電体酸化皮膜の耐熱性を20%改善する事などによって実現した。また、これらハイブリッドカー搭載に最適化したリプル性能改善の結果、従来比で1/2程度の静電容量ながら1.5倍の許容リプル電流を実現し、同一許容リプル電流の従来品に対して30%の小形化を達成している。また、製品構造においてもケース内部素子の発熱を積極的にケース外部へ導く放熱設計を行っており、この機能を積極利用することで、コンデンサの発熱を抑制、長寿命使用が期待できる。
 
写真3 自動車用大形アルミ電解コンデンサ「EVシリーズ」

◆アルミ電解コンデンサ技術の今後
 アルミ電解コンデンサは、他のコンデンサと比べて容易に大容量が得られ、容量単価は圧倒的に安価であるが、エネルギー用途において、「高電圧」、「高温度」、「大電流」といった要素で個別に性能比較をした場合、大容量化が急速に進むフィルムコンデンサ、積層セラミックコンデンサが脅威となりつつある。しかし、上述した要素技術に代表される様なエネルギー分野で要請の強い技術を盛り込んだ商品開発を行うことで、引き続きアルミ電解コンデンサの優位性を確保して行くことが可能と考える。
ニチコン株式会社 長野工場
技術部技術課 石田雅彦 竹田敏和

2003年1月8日付 電波新聞掲載

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