環境配慮形コンデンサの最新技術動向
 エレクトロニクスの発展はその一方で、廃棄物に含まれる有害物質による生態系の破壊など、深刻な社会問題となり、地球環境の保全という観点から早急な対応が求められている。
 EU(欧州連合)では、電子・電気機器に対して鉛などの有害物質使用を禁止する規制(RoHS指令)が、2006年7月より実施される。RoHS指令で使用が禁止されるのは鉛、カドミウム、水銀、6価クロム、及び特定臭素化合物のPBB、PBDEの6物質である。法規制ではEUが先行しているが、具体的取り組みは国内企業が活発となっている。
 上記有害物質の中でも電子・電気機器に多用される鉛を排除した、いわゆる“鉛フリー”を実現するためには、基板実装時に使用するはんだ及び、部品の電極・端子を鉛フリー材料に変更すると共に、部品には実装時のはんだ付け条件を満たす耐熱性が要求される。
 鉛フリー材料の選定には、はんだ付けの基礎となるマイクロソルダリング技術を理解し、実用化する必要があり、現段階でもはんだ接合部の界面現象の解明が続けられている。
環境対応コンデンサ"Geo Cap
画像1  我が国のセットメーカーによる環境対応要求は、90年代後半から始まった。この要求に応えるべく当社では環境対応にいち早く取り組み、アルミ電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサの端子部に鉛を含有せず、外装スリーブにPVC(ポリ塩化ビニル)を使用しないコンデンサの生産を開始した。
 これら環境に配慮した製品を「Geo Cap(ジオキャップ)シリーズ」と総称し、拡充を図っている。
 当シリーズは、鉛入りはんだの全廃に向けて、国内で標準となりつつある“錫−3.0銀−0.5銅はんだ”による評価を進め、鉛フリー化の対応を完了している。また、ユーザーの固有条件に対しても逐次対応を実施している。
 ここでは、当社の「アルミ電解コンデンサ」、「タンタル電解コンデンサ」、「フィルムコンデンサ」の環境対応状況について述べる。
アルミ電解コンデンサの環境対応
 「アルミ電解コンデンサ」で地球環境に影響を及ぼす材料には、前述の端子メッキに含まれる鉛と外装スリーブに使用されるPVCが該当する。PVCは焼却時にダイオキシン発生の恐れがあることと、安定化剤として極く微量ではあるが鉛化合物を含有している。

この2つの材料に対して、当社は次のように対応している。

「リード線形/基板自立形アルミ電解コンデンサ」の端子メッキは錫−鉛メッキから錫100%、 「チップ形アルミ電解コンデンサ」は錫−ビスマス合金に変更。
外装スリーブのPVCは、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリオレフィンなどの材質に変更。

 使用材料の環境対応は、コンデンサに大きな影響をおよぼす。この影響を最も大きく受けたのが「チップ形アルミ電解コンデンサ」と「オーディオ用アルミ電解コンデンサ」であった。
 環境対応品として「チップ形アルミ電解コンデンサ」が、問題になったのはリフローはんだ付け時の耐熱問題である。鉛フリーはんだの高融点化に伴いリフローはんだ付け温度が上昇し、使用される「チップ形アルミ電解コンデンサ」の耐熱性向上を余儀なくされた。この問題に対し当社は、製品特性を変更することなく耐熱性を向上させるため、封口部材、ケースの改良や設計仕様の見直しにより、リフロー温度を現状より20℃高い250℃でのリフローを可能とした。さらに高いリフローはんだ付け温度への対応要求もあり、さらなる耐熱性強化を進めている。

画像2  一方、「オーディオ用アルミ電解コンデンサ」は、使用材料の変更が直接音質に大きな影響を与える。一般的な環境対応部材は音質を悪化させるため、環境対応部材に対して徹底的に音質をチューニングした。環境対応であることを前提として、原料の配合比や新規材料を検討した結果、環境対応品でありながら全音域に歪み感がなく澄みきった高域を再現する「FQシリーズ」の開発に成功した。
この新シリーズの開発により、「環境対応オーディオ用アルミ電解コンデンサ」に対する方向性を見い出すことができたといっても過言ではない。今後、新材料の投入も含めて「高音質環境対応形アルミ電解コンデンサ」の更なる開発に努めていく。
 鉛フリーに対応したアルミ電解コンデンサは耐熱性に優れており、融点の高い鉛フリーはんだ条件においても特性を損なうことはない。しかし耐熱温度が低い小形部品に条件を設定した場合、特に大形アルミ電解コンデンサでは固着強度に注意することが必要である。
 また、外装スリーブのPVCは、難燃性規格(UL 224 VW-1)を取得していたが、PETは現在取得できていないため、取得に向けて検討を進めている。
タンタル電解コンデンサの環境対応
 「タンタル電解コンデンサ」は、コンデンサ素子を樹脂モールドし、リードフレームを用いて電極を引き出した構造となっている。当社のリードフレームタイプ(F92, F93シリーズなど)は、1986年の量産開始当時より鉛をはじめとしたRoHS規制物質を一切含まない材料で構成しており、錫−鉛メッキのリードフレーム端子が主流であった当時から、環境に配慮し錫100%メッキ材で開発、生産してきた。従来の錫−鉛共晶はんだや代表的な鉛フリーはんだである錫−銀−銅はんだとも充分な接合性があり、信頼度の高い鉛フリー製品としてご使用いただいている。
 モールド形リードフレーム品は高い汎用性からIT関連をはじめ幅広い電子機器に使用されているが、リードフレームをパッケージから引き出し電極端子としているため、体積効率が低いことは否めない。こうしたことから、リードフレームを使用しないコンデンサ構造に注目が集まっている。すなわちリードフレームを使用しないため、コンデンサ素子を大きく(高容量化)することができることから、パッケージの小形・薄形、高容量、低ESR・低ESL化が可能となる。当社ではリードフレームを使用しないタンタル電解コンデンサフレームレス TMシリーズを2タイプとりそろえ市場ニーズに応えている。

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 フレームレス TM樹脂外装タイプ(F95シリーズ等)」は、樹脂外装(樹脂モールドではない)を施した独自の構造で、優れた体積効率を有している。リードフレーム構造品よりも小形化でき、約2倍の静電容量を収納できるなどのメリットがあり、携帯電話やデジタルカメラなどのモバイル機器に広く使用されている。電極端子は、製品開発当時、錫−鉛系の溶融はんだで形成していたが、2001年以降、錫−銅系の溶融はんだへ順次切り替え、鉛フリー化を完了している。
 フレームレス TM樹脂モールドタイプ(F98シリーズ)」は、「高い体積効率」と「高密度実装対応」の両立を目指したコンデンサである。6.3V/22μFの場合、リードフレーム構造品では2012サイズで高さ1.1mmであるが、「F98シリーズ」では1608サイズで高さ0.8mm(体積比Δ60%)で実現。さらに、この「F98シリーズ」は2001年に量産を開始したシリーズで、RoHS規制物質などの環境負荷物質を開発時より一切含まない設計としている。また量産方法も、モールド樹脂や電極材など、量産に伴う廃棄材料を極力少なくする設計を取り入れている。
 当社が生産する「タンタル電解コンデンサ」は、全シリーズが鉛及びPVCを含まない環境対応品「Geo Cap」であり、環境対応形電子部品として安心してご使用いただけると共に、フレームレス TMシリーズを検討いただくことでさらなる小形、高機能化に貢献できるものと考えている。
フィルムコンデンサの環境対応
画像4 「樹脂ディップ形フィルムコンデンサ」は、金属化プラスチックフィルムを巻回した素子の両端面に金属を溶射してリード線を溶接し、外装に難燃性エポキシ樹脂ディップを施した構造となっている。
 「電子機器用フィルムコンデンサ」の環境対応としては、リード線の鉛フリー化、溶射金属の鉛フリー化、外装ディップ樹脂の臭素・アンチモンフリー化が必要となる。
 リード線は錫−鉛はんだめっきを施しているが、これを錫めっきに変更し、溶射金属も錫−亜鉛系合金に変更して対応している。
 外装デイップ樹脂は難燃化の必要性から、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含有したエポキシ樹脂を使用していたが、これをリン系難燃剤に変更し対応を進めている。
 リード線の鉛フリー化は、既に対応中であるが、2004年4月には全面的に鉛フリー化を予定している。
 また、溶射金属の鉛フリー化品についてもサンプル対応中である。
 外装デイップ樹脂の臭素・アンチモンフリー化は、JIS C 5101-1 外部耐炎性カテゴリCを満足する製品を開発しており、ユーザー要求により切り換えを進めている。

画像5 昨秋商品化した「外装レスチップ形フィルムコンデンサ」は、溶射金属は錫−亜鉛系合金、フレーム端子は錫メッキとして環境に配慮した設計としている。
 また、進相用、各種産業用など巾広い用途に使用されている「電力・機器用コンデンサ」では、外部引出し碍子部、コンデンサ素子構成、コンデンサ素子結線及び内部結線部に錫−鉛系はんだを、また碍子部端子絶縁用にPVCキャップを使用しており、環境配慮の面より鉛フリー、PVCレスの取り組みを進めている。
 電力の省エネ化を図る目的で、受配電設備に使用される「進相コンデンサ」においても当社は、環境対応品として、業界に先きがけ2000年に「乾式高圧進相コンデンサ」、2002年に「乾式低圧進相コンデンサ」を開発、「GeoDRY」シリーズとして量産化している。
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  「GeoDRY」の具体的取り組み内容は、次のとおり。
地球温暖化防止のため排出抑制対象となっているSF6ガスに替えて窒素ガスを充填している。
コンデンサ内部の素子結線と外部への引き出し結線は、鉛フリーはんだを、また碍子部端子用絶縁キャップは、ゴムを使用してPVCレス化を図っている。
コンデンサに使用しているはんだは、使用目的により、電気、機械的性能が要求されるが、機械的強度は温度変化に対するはんだの疲労等の耐環境性能を重視し、温度サイクル評価試験を行ない耐用性の検証を行っている。

 地球環境の保全は社会的責任であるとの認識から、当社はRoHS指令に代表される有害物質を製品に使用しないことを基本姿勢に、その完全排除に取組み、顧客の満足の得られる、地球環境に配慮した製品を今後も提供していく考えである。
 
ニチコン株式会社 技術部
2004年1月7日付 電波新聞掲載


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