環境対応進相コンデンサの最新技術動向

環境対応乾式低圧進相コンデンサ“GeoDRY”:写真
環境対応乾式低圧進相コンデンサ
“GeoDRY”

進相コンデンサは、負荷及び系統で消費される無効電力を低減するために欠かすことのできないものである。進相コンデンサによる負荷の力率改善は、線路電流の減少による損失の低減、電圧降下の低減、受変電設備の有効利用、さらには電気料金の大幅な節減効果がある。進相コンデンサは、受変電設備に幅広く使用されており、当社では受変電高圧側、又は、末端低圧負荷側に設置される用途に各種進相コンデンサをラインアップしている。

当社の環境対応進相コンデンサ“GeoDRY”(ジオドライ)は、1997年12月に開催された地球温暖化防止に関する京都会議「第三回気候変動に関する国際連合枠組み条約締結会議(COP3)において排出抑制ガスの一つに指定された六フッ化硫黄(SF6)ガスに代え窒素(N2)ガスを採用し、鉛フリー、脱塩化ビニルを図った。業界に先駆けた商品である。
近年、環境対応品への市場要求は、加速的に高まり、この動きは電子部品から進相コンデンサ等の電力機器にまで広がってきた。2006年7月から施行される電気・電子機器のRoHS指令対応に向けて当社は、いち早く取り組んでいる。

RoHS指令の規制対象物質は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、特定臭素系難燃材(PBB、PBDE)の六物質である。これら規制対象物質の内、当社進相コンデンサで対象となるのは、鉛と電気亜鉛メッキ銅板の表面処理に含まれる微量の六価クロムである。RoHS指令における許容含有量は、鉛、水銀、六価クロム、PBB、PBDEは、0.1重量%を最大許容値としている。含有量は、機械的に単一の材料に分離できないユニットを単位としている。
さらに当社が取得している環境マネジメントシステム規格ISO14001の環境方針に基づき、環境負荷物質の低減に継続的に取り組んでいる環境負荷低減目標は、PRTR6物質の鉛、キシレン、トルエン、ビスフェノールA、アンチモン、三酸化アンチモンの低減である。
この様に、当社の環境対応は、1997年以降有害物質排除に向けて積極的に取り組んでおり、進相コンデンサ全般についてRoHS指令対応が可能となってきている。
以下に具体的な取り組みを説明する。

進相コンデンサは、誘電体フィルムを巻回したコンデンサ素子の端面に外部引き出し電極となる金属を溶射し、該当コンデンサ素子を定格電圧、定格容量に応じて複数個直列、並列に接続してコンデンサのユニットを構成している。このユニットを外部に引出す碍子端子などに接続し、密閉形容器又は開口形の容器に収容後、コンデンサ油を真空含浸して注入封印したオイルコンデンサタイプ、N
2ガスを充慎した乾式N2ガスタイプ、開口形の容器にコンデンサユニットを収容して樹脂を充慎した樹脂モールドタイプがある。規制対象物質の鉛は、コンデンサ素子相互間、外部端子への結線接続部など電気的接続、及び小形化密閉容器及び碍子端子の容器への取り付け部の気密シールに使用している鉛入りはんだに含まれている。この鉛入りはんだは鉛と錫の合金であり、特有のクリープ現象によるはんだの応力緩和作用により、繰り返し応力に対して長期信頼性を有している。
これに対して、一般的な鉛フリーはんだは、錫、銀、銅の合金である。この鉛フリーはんだ採用の課題は、融点が、高いこと及び展延性が少ないことで、はんだ付け作業が従来の鉛入りはんだに比べ非常に難しいことである。因みに鉛入りはんだの融点が180℃〜215℃に対し、採用検討した鉛フリーはんだの融点は215℃〜270℃である。鉛フリーはんだは、金属と配合量により、融点及び展延性が異なり、はんだ付け時の濡れ性、フィレットの形成、なじみなど、はんだ付け性能に大きく影響する。

進相コンデンサの素子結線部のはんだ付けは、コンデンサ素子誘電体フィルムを介した電極端面引出し部で最も重要な電気的接続箇所で、はんだ付け時の熱量管理を必要とする箇所である。鉛フリーはんだの融点が高いことで、はんだ付け作業性に課題があったが、当社は、各種鉛フリーはんだの中から信頼性と作業性がもっとも良好な鉛フリーはんだを選定した。この鉛フリーはんだの採用に向けての信頼性評価では、電気性能評価(接合部の耐電流評価、損失評価など)温度上昇評価(接合部のESRなど)及び環境ヒートサイクル評価(はんだの長期耐用性など)、機械的性能評価(引張強度、耐振動性能など)を繰り返し行い、良好な結果を得た。鉛フリーはんだの寿命評価において特に重要な評価試験は、ヒートサイクル評価である。これは金属の膨張収縮による繰り返し応力が、はんだ接合部に与える影響を評価するもで、はんだの長期耐用性を満足することを見極めるものである。はんだ付けは、作業条件として時間、量、フラックスなど重要な項目があり、当社は長年にわたり築き上げてきたはんだ作業のノウハウを基に鉛フリーはんだの作業条件を設定して、さらにヒートサイクル加速寿命評価の考え方についてCoffin manson法を活用した評価と、はんだのミクロ的観察を繰り返し行い評価してきた。鉛フリーはんだが、進相コンデンサに採用された歴史は浅く、当社製品の市場実績は4年間であるが、長期耐用性が求められる機器としてのはんだ加速寿命評価試験においては、20年以上相当の評価を得ており、鉛フリーはんだの信頼性に問題はない。

一方、RoHS指令規制物質の六価クロムは、大形密閉容器の材料として使用している電気亜鉛メッキ鋼板の表面処理に微量に含まれている。進相コンデンサは、10〜15年間の長期期待寿命が要求されており密閉容器としては腐食、錆に対しての防護と気密溶接性能を満たすことが必要である。電気亜鉛メッキ鋼板の六価クロムフリー化は顧客の要求が強く、鋼板メーカーも、六価クロムフリー製品の検討を進めており、当社は、この動きに合わせ六価クロムフリー鋼板を入手して評価を行ってきた。これに要求される性能は気密溶接性、はんだ付け性、コンデンサ油の汚染性、塗膜の密着強度、塗装作業性などであるが、六価クロムフリー電気亜鉛メッキ鋼板は、現行鋼板と同等の性能でコンデンサ容器の使用要求性能を満たす良好な結果を得ており、鋼板メーカーの六価クロムフリー電気亜鉛メッキ鋼板の量産化に合わせ六価クロムフリーへの対応は可能になった。このようにして、当社の環境対応進相コンデンサは、環境負荷物質の全廃又は削減と代替物質採用に向けた開発評価結果、RoHS指令は、一部大形容器の電気亜鉛メッキ鋼板に含まれる六価クロムのクロムフリー鋼板メーカの量産化時期に合わせオイルタイプ、乾式タイプ、樹脂モールドタイプ全製品に対応できる状態となっている。

環境対応への成果として当社は、環境対応乾式低圧進相コンデンサ“GeoDRY”(ジオドライ)の量産化を行っている。2002年度電設工業展においては、日本電設工業協会会長奨励賞を受賞して、発売以来1000台以上の市場実績を持つ。また同製品に先駆け商品化を行っている環境対応乾式高圧進相コンデンサ“GeoDRY“は、発売以来6000台以上の市場実績を持ち好評を得ている。

環境対応乾式低圧進相コンデンサの特長は次のとおりである。

特長
  (1)  環境に優しい。
ケース内は窒素ガスを充填しており、SF6ガスを全く使用していないため地球温暖化防止に寄与し、環境に優しい設計である。
(2)  鉛フリー、脱塩化ビニル
内部接続電極、結線に鉛フリーはんだを使用している。そして、脱塩化ビニルとして、端子カバーにはゴムを使用し、結線にポリエチレン被覆電線を使用するなど、エコ材料を使用した環境にやさしい設計となっている。
(3)  高い信頼性
金属化ポリプロピレンフィルムを巻回したコンデンサ素子を直・並列接続した構成になっているので、フィルム欠陥部で局部的破壊した場合でも、良好な自己回復が得られ、フィルムの優れた絶縁性能を100%利用している。
(4)  低損失、低温度上昇
誘電体は低損失のポリプロピレンフィルムのみで構成しているので、低損失で、温度上昇も低く抑えられる。
(5)  安全性
万一の内部故障を検出するため、ガス圧の上昇を検知して動作する「内部圧力上昇検出スイッチ」とガス漏れなどによる圧力低下を検知する「内部圧力低下検出スイッチ」を装備している。さらに、「内部圧力上昇検出スイッチ」が未接続で電源が開放されなかった場合には、「安全弁」が動作してケース破裂を防止する二重の保護装置付構造としている。

規格、性能は、次のとおりである。

  (1)  設置場所
屋内用 標高2000m以下
(2)  周囲温度
−25〜+45℃(24時間平均35℃以下、1年間平均25℃以下)
(3)  最高許容電圧
定格電圧の1.10倍 (24時間のうち8時間以内)
定格電圧の1.15倍(24時間のうち30分以内)
定格電圧の1.20倍(5分以内)
定格電圧の1.30倍(1分以内)
但し、1.15倍を超える電圧の印加は、コンデンサの寿命を通じて200回を超えないものとする。
(4)  最大許容電流
定格電流の1.3倍とする。ただし、静電容量の実測値が許容差の範囲内でプラス側のものは、その分だけさらに電流の増加を認める。
(5)  容量許容差
定格値に対して−5〜+15%(at20℃)
三相の相間不平衡率108%以下
(6)  損失率
0.15%以下(at20℃、定格電圧)
(7)  放電特性
端子開放後、その残留電圧を3分間に75V以下にする。
(8)  塗装色
マンセル5Y7/1色
(9)  保護装置
圧力異常検出スイッチ、安全弁付
(10)  規格
JIS C4901(2000)
乾式低圧進相用コンデンサの標準的な定格は、次のとおりである。 
回路電圧220V、440V 
周波数50Hz、60Hz 
定格容量10.6〜106kvar(L=6%)、
11.5〜115kvar(L=13%)

以上

ニチコン草津株式会社 コンデンサ部 技術一課
      上野龍成
2005年7月1日付 電波新聞掲載
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