車載用アルミ電解コンデンサ

はじめに

 近年、環境対応とドライビング性を向上するため、自動車の電子化が進んでいる。また、車載用電子回路は、快適な車内空間確保のために車室内からエンジンルーム付近へ搭載されることが多くなってきた。そのため、車載用電子回路に使用される部品は、小形・高機能化と共に、雰囲気温度上昇に伴う高温度対応、耐振動性向上、低インピーダンス化、長寿命化などが求められている。これらの要求に加えて環境問題への配慮も欠かすことができない課題である。以下に当社の新製品を例に最近のアルミ電解コンデンサの技術動向を述べる。

自動車分野向け新製品

 当社は、自動車分野への市場拡大を積極的に推進するためにリード線形およびチップ形アルミ電解コンデンサの新製品5シリーズをラインナップした。新製品の詳細を以下に述べる。

車載機器用135℃品「BWシリーズ」
車載機器用135℃品「BWシリーズ」

 当社は多様化する高温度対応のニーズに応えるべく、135℃対応のリード線形アルミ電解コンデンサ「BWシリーズ」を開発した。本製品の開発により、125℃対応の「BTシリーズ」、135℃対応の「BWシリーズ」、150℃対応の「BXシリーズ」と、高温度化の要求に応えるバリエーションに富んだシリーズ体系を実現した。
  「BWシリーズ」は、当社がこれまで培ってきた技術をベースに、新たに開発した低蒸散性電解液、低透過性かつ耐熱性を向上させた封口ゴムの採用とその他使用部材の最適な組み合わせにより実現している。サイズ体系は、高倍率電極箔を使用することで、150℃対応の「BXシリーズ」と比較して最大50%の小形化を実現している。
  仕様は以下の通り。ケースサイズφ8×11.5mmL〜φ16×31.5Lの9サイズ、カテゴリ温度範囲−55〜+135℃、耐久性135℃1000〜3000時間、定格電圧範囲10〜100V、定格静電容量範囲1〜4700µF。

125℃対応耐振動構造品「UEシリーズ」品
125℃対応耐振動構造品「UEシリーズ」

 「UEシリーズ」は高温度対応かつ耐振動性向上のニーズに応えるべく開発した、チップ形アルミ電解コンデンサである。当シリーズは雰囲気温度が高く、耐振動性向上が求められているエンジンルームへの設置を想定したシリーズであり、耐振動性と耐衝撃性の向上を図るために座板の側壁でコンデンサケースを保持し、座板底面に設けた補助電極で基板との接合強度を高めた構造としている。その振動耐久性は30Gにも耐える構造となっている。
  仕様は以下の通り。ケースサイズφ8×10mmL〜φ20×21.5mmLの9サイズ、カテゴリ温度範囲−55(φ8、10は−40℃)〜+125℃、耐久性125℃ 5000(φ8、10は2000)時間、定格電圧範囲10〜50V、定格静電容量範囲33〜4700µF。

150℃対応耐振動構造品「BCシリーズ」
150℃対応耐振動構造品「BCシリーズ」

 当シリーズは「UEシリーズ」と同様に雰囲気温度が高いエンジンルームに設置されることを想定し、「UEシリーズ」と同様の振動条件30Gの耐振動構造に加え、150℃という超高温度に対応したシリーズである。
  仕様は以下の通り。ケースサイズはφ12.5×13.5mmL〜φ18×21.5mmLの4サイズ、カテゴリ温度範囲−55〜+150℃、耐久性150℃1000時間、定格電圧範囲10〜50V、定格静電容量範囲100〜3300µF。

125℃対応低温ESR規定品「CJシリーズ」
125℃対応低温ESR規定品「CJシリーズ」

 「CJシリーズ」は当社が新たに開発した新規低蒸散性溶媒を用いた電解液と使用部材の最適な組み合わせにより、現行の125℃1000〜2000時間保証チップ品「UBシリーズ」より長期安定かつ低ESR化(低温−40℃)を実現したものである。
  本シリーズは、125℃2000時間の耐久性試験前後の−40℃でのESR値を規定(φ6.3は初期のみ規定)しており、「UBシリーズ」と比較して耐久性試験(125℃2000時間)後の−40℃におけるESRをおよそ半分以下に低減した。
  仕様は以下の通り。ケースサイズφ6.3×8.7mmL〜φ10×10mmLの3サイズ、カテゴリ温度範囲−40〜+125℃、耐久性125℃2000時間、定格電圧範囲10〜50V、定格静電容量範囲10〜470µF。

オーディオ用広温度範囲品「KTシリーズ」
オーディオ用広温度範囲品「KTシリーズ」

 「KTシリーズ」は、カーオーディオ、カーナビゲーションといった車載用オーディオに使用されることを想定して開発した製品で、当社のオーディオ用標準品である「FWシリーズ」より広温度化を図ることで、小形・高機能化による熱や車載内の熱に耐えうる広温度範囲で使用可能となるオーディオ品である。
 本シリーズは、低音領域を充実させた音質を得るために、各部材の最適な組み合わせを検討し音質バランスを整えている。また、幅広い用途にて使用されることを想定し、標準品サイズ体系と同レベルに設定しており、小形サイズで高音質、広温度対応といった特徴を兼ね備えている。

  仕様は以下の通り。ケースサイズφ5×11mmL〜φ12.5×40mmLの11サイズ、カテゴリ温度範囲−55〜+105℃、耐久性105℃1000時間、定格電圧範囲6.3〜50V、定格静電容量範囲0.1〜10000µF。

地球環境問題

 地球環境問題が大きく取り上げられている現在、ダイオキシン、鉛、RoHS指令対応がクローズアップされており、企業においては早急な対応が迫られている。当社は、これらの問題の重大性を早くから認識し、全製品において環境に配慮した製品開発に努めると共に、生産時に発生する環境汚染物質、廃棄物による環境汚染問題の対策等に取り組んでいる。

(1)ダイオキシン問題

 従来、アルミ電解コンデンサの定格表示を目的に塩化ビニル(PVC)スリーブを使用していたが、PVCは焼却時にダイオキシンを発生させる可能性があるため、当社ではチップ形はナイロンラミネートケース、リード線形・基板自立形はポリエステル(PET)またはポリオレフィンスリーブの採用により地球環境に優しい製品開発を推進している。

(2)鉛問題

 鉛フリー化に向けては、はんだメーカー、装置メーカー、セットメーカー、電子部品メーカーなどが一体となり取り組んでいる。当社は、これまでの錫−鉛メッキリード線に対して鉛を含まない錫100%または錫−ビスマスメッキリード線を標準としている。

(3)RoHS指令対応

 RoHS指令で特定有害物質に指定されている鉛、カドミウム、6価クロム、水銀、PBB、PBDEの中で、チップ形・リード線形および基板自立形アルミ電解コンデンサが含有する有害物質はリード線のメッキおよびPVCスリーブの安定剤に含まれる鉛のみである。鉛については上記に述べたように鉛フリー化を積極的に進めており、ここに紹介した新シリーズは全て鉛フリー、RoHS指令に対応済みの製品となっている。

  自動車分野市場は急速に拡大していくことが予想される。今後も市場が要求する高温度化、耐振動性、信頼性向上などの要求に沿った商品開発を積極的に行い、ユーザーの期待に応えていく。

ニチコン大野株式会社 技術部 技術課 村山 誠
2007年1月25日付 電波新聞掲載
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