「電気二重層コンデンサの最新技術動向」

1.はじめに
〔図−1〕電気二重層コンデンサ
「EVerCAP®」外観写真

 原油価格の高騰により省エネに対する関心が高まっている。また、地球温暖化対策として、CO2削減が緊急の課題となっている。このような社会的背景から、電気を有効に使うための技術、いわゆる「電力回生」が注目されている。機器で余ったエネルギーは、熱として排出していたが、もう一度電気に変えて再利用することで、省エネやCO2削減が可能となる。電力回生は、従来より工作機器、鉄道車両といった大型モーターで行われていた技術であるが、ハイブリッド車の普及もあり、低電力機器への拡大が進んでいる。さらに民生機器への拡大も期待される技術である。電力回生では電力系統に戻す方法が一般的に行われているが、系統の電圧制御や効率も考慮すると、機器内部で蓄電装置に充電する方法が有効である。蓄電装置としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などが期待されているが、瞬時の電流の出し入れには内部抵抗の低さが重要であり電気二重層コンデンサ(キャパシタ)が好適といえる。
 回生用途以外でも、自然エネルギーを利用した風力発電、太陽光発電では変動する発電電力を平準化して送電する、あるいは負荷の瞬時大電力を平準化する用途にも電気二重層コンデンサが有効である。また、半導体製造工場や薄型ディスプレイパネル加工工場、金型加工工場などでは、高価な生産品が瞬時の電圧低下によって生じる障害を防止する目的で、瞬時電圧低下補償装置を備えるが、近年これらの装置にはメンテナンスフリーの電気二重層コンデンサが使用されてきている。
 当社は、環境保全に配慮した企業活動を行っており、電気二重層コンデンサはその代表製品の一つである。本稿では当社の電気二重層コンデンサ「EVerCAP®」の技術について紹介する。

2.電気二重層コンデンサの原理
 

 電気二重層とは固体と液体の2種類の物質が接するとき、その界面にきわめて短い距離で+と−の電荷(液体はイオン)が配列する現象で、この2つの物質に電圧をかけると液中のイオンが界面に引き寄せられ電荷を蓄えた状態となる。この現象を利用し、+、−の両電極に表面積の非常に大きな活性炭を用い、極間に挿入したセパレータに+、−イオンを多く含む電解液を保持させている。電解液には水溶液系と有機系があるが、分解電圧の高い有機系が多く用いられ、単セルで2.5〜2.7Vの耐電圧を有している。

〔図−2〕電気二重層原理図
3.電気二重層コンデンサの特長

 電気二重層コンデンサは、二次電池と比べ出力密度が高く大電流で充放電が可能である。電気二重層コンデンサの充放電は、電解液中のイオンの物理吸脱着で行われ、電池のような化学反応がないため、充放電サイクルによる特性劣化が少なく、製品の寿命も長い。また、反応性の高い物質を含まず、釘差し試験等の破壊試験を行っても、発熱はあるが発煙、発火等の危険性がきわめて低い。環境面では、重金属等の環境負荷物質を含まず環境に優しい等の優れた特長を有している。

4.「EVerCAP®」の技術

《電極》
 活性炭原料はヤシガラ、フェノール樹脂、石油コークス、ピッチなど、賦活の方法には水蒸気、KOH賦活があるが、これらは性能とコストのバランスで選択している。活性炭電極の製造方法は、活性炭をスラリー状にして集電極に塗工する方法と、活性炭に導電補助剤とバインダーを加えてシート状にして集電極に接着する方法などがあるが、当社は低抵抗でエネルギー密度の高い後者を採用している。

《電解液》
 有機系の電解液には溶媒として、プロピレンカーボネート、アセトニトリルなどあるが、アセトニトリルは燃焼時にシアンガスの発生が懸念されるため弊社では使用していない。溶質は主にアンモニウム塩、アミン塩、アミジン塩などあるが、用途、性能、構造などにより選択し使用している。
 不燃性で耐熱性の高いイオン液体も使用されるが、低温での粘度が高く、またコストの面でも課題がある。
 有機系電解液は、製品内部に水分が存在すると分解電圧が低下してコンデンサの耐電圧を低下させるため、製造工程中のドライ環境が重要である。
 電解液は、両極の表面に電気二重層を形成させる他に、両極間の電気的導通の役割を持っている。充放電では、電解液中を直流大電流が流れるため、導電率が低いと内部抵抗が大きくなり、内部発熱が大きくなる。また、電解液は静電容量、内部抵抗の特性変化として信頼性に影響を与えることから、性能改善を目的に新電解液による製品開発を行っている。図−3に新電解液による性能改善例を示す。

〔図−3〕新電解液性能改善データ

《構造》
 大容量電気二重層コンデンサのセル構造には、円筒形、偏平形(角形)、ラミネート形などがある。円筒形はアルミ電解コンデンサの構造と同じで、電極とセパレータを重ね合わせて巻回した素子構造で、円筒形のアルミケースに収納し、電極端子を設けた封口板で密封している。偏平形(角形)は、電極とセパレータを交互に重ね合わせ、その一枚一枚の電極からリードタブを引き出し、外部端子に接続し、偏平形(角形)のアルミケースに収納して密封している。ラミネート形は積層数を少なくして、アルミラミネートフィルムで密封したもので、薄型形状となる。

《実装性》
 実装上、円筒形はセル間の隙間がデッドスペースとなり充填効率が低いと思われがちであるが、実使用においては複数セルを直列に接続しモジュールとして使用するため絶縁性や放熱性を考慮しスペースが必要となる。セルの固定方法をスタッドボルト構造などで最適化することで円筒形故のデットスペースは装置全体として影響しない程度のスペースに留めることができる。

《低抵抗化巻取構造》
 円筒巻回形はロール状の電極箔とセパレータを重ね合わせて巻軸で巻き上げることから、短時間での製造が可能であり生産性が高い。反面、集電極からの電極引き出し方法に技術のポイントがある。電極内部からアルミ引き出しタブを介して外部端子に接続する方法と、円筒素子の両端面から片電極ずつ露出させ、引き出し電極板を接続する方法とがある。当社ではアルミ引き出しタブ方式を採用している。内部抵抗を低減するために引き出しタブ数を多数接続する方法があるが、両面活性炭電極を使用する場合あらかじめタブ打ちする位置を寸法決めし、集電極露出箇所を作っておく必要がある。しかし、位置決めした位置は、巻き上げのテンションや材料厚みなどにより巻取りが進むにつれの誤差が蓄積され、多数のタブを同一線上に位置させることが困難であった。このため引き出しタブ位置は数本に限られ、内部抵抗を十分下げることができなかった。この問題を解決するため、活性炭電極は集電極の片面だけに形成し、その集電極が互いに向かい合うように2枚重ね合わせ、これを一方の電極とした。セパレータを介し同様に集電極を向かい合わせた2枚の電極を重ね合わせて巻き上げる構造とした。専用自動巻き取り機では、巻き軸に巻き上げられる直前に高精度で割り出した位置にタブを接続することで、多くのタブを引き出すことが可能となり、内部抵抗の大幅な低減を実現した。
 図−4に新開発巻き取り構造と引き出しタブ本数と内部抵抗の関係を示す。

〔図−4〕新巻き取り構造
5.ユニット化技術

 電気二重層コンデンサの耐電圧は2.5〜2.7V程度で多くの場合、使用時には複数直列接続して高電圧化することになる。このとき各セルの分圧は、静電容量と漏れ電流によってバラツキがでるため、過電圧防止回路等のバランス回路を付加する必要がある。当社ではスイッチング電源、機能モジュール、高圧大電流電源等で培った回路技術を有しており、バランス回路から充放回路を付加した蓄電ユニットの対応が可能である。

6.ラインアップ

 「EVerCAP®」は小形リード線品から大形ネジ端子品まで、幅広い用途に対応するべく商品を取りそろえている。リード線形には高耐圧2.7V対応の「UMシリーズ」を追加。大容量品では高エネルギー密度タイプ「JDシリーズ」、ハイパワー密度タイプ「JLシリーズ」の2系統で用途に応じた提案をしている。また、電極仕様、電解液の選択により、静電容量、内部抵抗、サイズは、カスタム対応が可能である。
 さらにエネルギー回生用途向けとして偏平積層形品をラインアップした。内部抵抗をより抑えた電極積層構造を採用し、業界最高レベルのパワー密度を実現した。

偏平積層形代表定格:
・定格:2.5V 1000F
・内部抵抗:0.7mΩ
・サイズ:W76xD26xH142(mm)
7.セル選定方法
〔図−5〕定電力放電波形

 電気二重層コンデンサは、二次電池と異なり放電電流とともに電圧が直線的に低下する。また、内部抵抗により電圧降下が発生するので、パワー用途の場合、使用電圧範囲からこの電圧降下分が取り出せないエネルギーとなる。装置設計においては、この電圧降下分を考慮し必要容量を算出する必要がある。以下に使用条件とコンデンサセル選定のための算出方法を示す。

装置の動作電圧から直列数、必要電力量からコンデンサセル容量を決定し、セルの直並列構成を決定する。
セル構成からユニット容量、内部抵抗(DCR)を求め以下の式で放電時間tを算出。
※DC−DCコンバータの効率はWLの中に含め考慮要。
・上記を繰り返し最適ユニット構成を求める。
8.まとめ

 地球規模で、省エネ、環境問題への取り組みが緊急課題となるなかで、パワー用電気二重層コンデンサが一層注目され、ここ数年の間に自動車,鉄道車両、建設機械、産業用機械などの市場分野で採用が拡大することが予想される。当社ではリード線形からネジ端子形まで、幅広くさまざまな用途に対応した生産実績を積み重ねてきたが、今後はこれをベースに生産能力の拡充を図っていく。さらには高エネルギー密度化、高パワー密度化、高信頼化、高耐熱化の課題に対し、材料技術からの研究開発を強力に進めていく予定である。


ニチコン株式会社 長野工場 電気二重層技術部 黒木 伸郎
2008年1月8日付 電波新聞掲載
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