「電気自動車用充電設備の最新技術動向」
 
1.まえがき

 地球温暖化が深刻な問題として議論されるようになり、環境問題への関心が世界的に高まる今日、低炭素社会実現に向けた取り組みが世界各国で積極的に進められようとしている。日本は、世界に先駆けて電気自動車を量産し、官民挙げてその普及に取り組んでいる。
 特に電気自動車の充電インフラ整備は今後の電気自動車普及の重要な要件であり、電気自動車用充電設備の種類とその特長、及び今後の整備拡大に向けた取り組みを紹介する。

2.電気自動車用充電設備の種類

 電気自動車用充電設備は、30分程度の短時間で充電できる急速充電器と8時間から14時間程度でゆっくり充電する倍速充電器や普通充電器が基本である。さらに自然エネルギーから発電する太陽光発電や、風力発電と組み合わせたものや、昼夜や天候に左右される自然エネルギーでも常時充電できるようにするため、蓄電機能を併せ持ったものなどがある。
 基本的な充電設備を表1にまとめた。普通充電や、倍速充電は、AC100VもしくはAC200Vで充電することから家庭用コンセントから充電できることが最大のメリットで、ガソリン車のようにスタンドに行く必要がなく、乗らない時に家でゆっくり充電できる反面、短時間での充電ができないという不便さがある。一方急速充電は、DC500Vで充電し、その電源容量も50kWと大きく、充電時間30分で約80%の充電ができるため、急いでいる時の充電には適しているが、標準的な家庭の電源容量が5kW以下であることを考えると一般家庭で持つことは難しく、公共の施設や、企業など今後普及してくる充電スタンドに設置することを前提としている。


充電設備の種類
[充電方法]
普通充電器
フル充電(コンセント等)
倍速充電器
フル充電(コンセント等)
急速充電器
80%充電
入力電圧 100VAC 単相 200VAC 単相 200VAC 三相
設置場所
想定される場所
自宅ガレージ 時間貸駐車場 ショッピング
センター
カーディーラー、コンビニ、病院、商業施設 等 ガソリンスタンド
高速道路SA
商業施設 等





航続距離
160kmの場合
約14時間 約7時間 約30分
航続距離
80kmの場合
約8時間 約4時間 約15分
設置費用
(工事費含む)
約5万円 約50万円 約600万円
表1:充電設備の種類
3.普通充電、倍速充電

 前述のように普通充電、倍速充電は、家庭用のコンセントから充電が可能である。その電気エネルギーの流れは、家庭用コンセントから供給される交流を電気自動車に搭載されている充電器が直流に変換して、同時に車載バッテリーの状況を監視しながらバッテリーにエネルギーを供給している。
 100年の歴史を持つ電気自動車が、これまで普及しなかった理由の一つに充電インフラの未整備が挙げられる。最近の電気自動車は、家庭で充電できるように車載充電器を車に搭載することでこの問題を解決した。また、航続距離を伸ばすためにリチウムイオン電池の容量が大きくなる中、最近のパワーエレクトロニクスの進歩により家庭の電源容量範囲内で夜中に充電すればほぼ満充電できる充電器が、小型軽量で高い信頼性を要求される車載用として開発されている。当社が、i-MiEV用に開発して供給している充電器は、量産電気自動車用車載充電器の第1号として三菱自動車工業殿と共同開発した。その写真を図1に示す。

i-MiEV用車載充電器
i-MiEV用車載充電器
 電気自動車は、エンジンがないため、動力駆動用のリチウムイオン電池から制御用の通常電池に電圧変換してエネルギーを供給する必要があり、そのDC/DCコンバータも重要な要素機器であるが、今回このDC/DCコンバータと前記充電器を一体化することで小型軽量化を達成した。このDC/DCコンバータ付き充電器の仕様を表2に示す。
 
入力電圧 AC100〜265V
出力電力 最大2.6kW
効  率 最大88%
冷  却 水冷
表2:充電器の仕様
4.急速充電器

 急速充電器は、交流を直流に変換する大容量電源であり、直流の500Vという高電圧を出力するため、特別のコネクタで車の端子に接続する。さらにバッテリーマネジメントシステムが大容量のリチウムイオン電池の状態を常に監視して安全性や信頼性を確保しており、急速充電器は、バッテリーマネジメントシステムとの通信をしながら充電する。この通信プロトコルの共通化を車メーカー、電力会社、充電器メーカーなどで構成するチャデモ協議会が中心になって取りまとめており、現在量産されている電気自動車、及び今後国内メーカーが発売する電気自動車の急速充電方式の標準になっている。チャデモ協議会では、これを世界の標準にしていくことを目指して各国のメーカーに働きかけている。
 急速充電器は50kWという出力を得るため、AC6600Vの高圧受電をしなければならない。そのため、受電設備や、高圧配線など工事費用が本体と同等かそれ以上必要であり、そのことが普及を遅らせる要因の一つになっている。

5.太陽光発電、蓄電池と充電設備の組み合わせ例

 最後に究極のクリーン走行を実現する自然エネルギーを用いた充電設備や、蓄電機能を持たせて受電容量を大きくしなくても急速充電が可能なシステムを紹介する。
 電気自動車は、走行中は、CO2を発生しないクリーンな自動車であるが、電力系統の供給する電気は、火力発電の電気が多く含まれており、発電段階のCO2発生は避けられない。自然エネルギーである太陽光発電のエネルギーを電気自動車に充電すれば、発電から走行まで含めた究極のCO2ゼロが達成できる。しかしながら、太陽光発電は、天候の変化や、夜間などその発電が安定していないため、太陽光発電のエネルギーだけで充電することが難しい。それを解決するために充電設備に太陽光発電と蓄電池を組み合わせて太陽光で発電された電力を蓄電池に貯めておき、蓄電池に貯めたエネルギーを使って電気自動車に充電するシステムが既に実用化されている。京都府が府庁に設置した充電設備は、20kWの太陽光発電と10kWhの蓄電池に急速充電器と倍速充電用コンセントを2口つけたもので、完全にクリーンな電気の供給を果たすと共に、蓄電池による充電により受電容量を高めずに、急速充電を可能にした。また、京都市西京極総合運動公園には、1.2kWの太陽光発電と5.6kWhの蓄電池に、倍速充電器を具えたシステムが設置されている。太陽光発電は、1.2kWと小容量であるが、5.6kWh の蓄電池を搭載することで、電気自動車への充電エネルギーをほぼ全て太陽光発電で賄えている。

京都府庁システム
京都府庁システム

京都市西京極総合運動公園システム
京都市西京極総合運動公園システム
6.まとめ

 国は2020年までに普通・倍速充電スタンドを200万箇所、急速充電スタンドを5000箇所設置する計画を発表している。普通充電、倍速充電は、車載充電器により、家庭で充電できるようになり、電気自動車の普及を推進している。一方急速充電は、短時間で充電できるが、電力系統の強化が必要であり、そうした問題を解決する分散電源として蓄電機能付クリーンエネルギーシステムを2種類紹介した。こうした取り組みが、日本の低炭素社会実現を加速する技術として活用されることを期待している。

ニチコン株式会社 NECSTプロジェクト 古矢 勝彦
2010年10月7日付 電波新聞掲載
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