「節電、省エネ、再生可能エネルギーを支えるテクノロジー」
 
1.まえがき

 東日本大震災に伴う福島第1原子力発電所の事故は、日本の電力事情を一変させた。原子力発電の安全性が問われると共に、再生可能エネルギーへの期待が加速される一方、直面した電力不足をどう乗り切るかに、企業も個人も知恵を絞っている。さらに原子力発電の安全性に対する不安から、定期点検で停止した原子力発電が再稼動できない事例が増え、被災地である東北や関東地区だけに限定されていた電力不足が、全国的な拡がりになりつつあるなか、節電、省エネの対応と、再生可能エネルギーの活用は、緊急課題になっている。
 当社は、「より良い地球環境の実現を目指して、価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献します。」を経営理念に掲げて、エネルギーの安定供給と環境保護の両立を目指して
会長、社長直轄プロジェクトとしてNECSTプロジェクト(Nichicon Energy Control System Technology)を震災の一年前の2010年3月15日に立ち上げて、既に活動を開始している。
エネルギーの安定供給と環境保護の両立を実現するには化石エネルギーへの依存を減らし、再生可能エネルギーの導入拡大を促進すると共に、ガソリンを燃焼することなく、走行できる電気自動車の普及も重要である。
 現在量産販売されている電気自動車には、当社の車載充電器が採用されており、電気自動車量産に貢献しているが、その技術を応用した充電インフラシステムも開発している。その中から太陽光発電と蓄電システムによる電力のピークカットや、風力発電の発電変動を抑制する取り組み、蓄電技術と再生可能エネルギーを組み合わせた、電気自動車用急速充電設備などの技術や設備を紹介する。

2.ピークカットを目指す蓄電機能付太陽光発電システム

太陽光発電と蓄電システムを組み合わせてピークカット機能を実現したシステムを紹介する。
 電気二重層コンデンサ技術と系統連系パワーエレクトロニスク技術の融合を図り、電気二重層コンデンサを蓄電部とする太陽光発電システムを2004年に開発し、当社本社ビルの屋上に設置し、2011年で稼動7年目を迎える。【図-1】
  本システムは、10kW太陽光パネル、最大電力追尾制御を行うDC-DCコンバータ部、そのエネルギーを蓄電するエネルギー蓄電部、そして、エネルギー蓄電部に充電されたエネルギーを系統側に出力させるパワーコンディショナ部で構成され、電力需要が大きいときにピークカットをするようにシステムを制御する。この制御方式を評価され、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)より「新制御方式適用型(ピークカット)」として太陽光発電新技術等フィールドテスト事業の共同研究者として助成を受けた。【図-2】
  具体的な動作として通常時は、太陽光パネルからの出力エネルギーをパワーコンディショナ部が系統側に出力し、ピークカット動作時は、太陽光パネルからの出力と、エネルギー蓄電部の両方からパワーコンディショナ部を通じて系統側に定格出力させる。
  蓄電部に電気二重層コンデンサを使用することにより、長寿命、鉛レス化を図っており、そこに蓄えたエネルギーを電力需要が大きいときに活用するシステムである。開発したシステムは、現在も稼動中である。今後はリチウム電池と組み合わせてピークカット量の増大や、系統連系の安定性、エネルギーの利便性をさらに向上させ、電力不足や、非常時の独立運転も可能にするシステムの開発に活かしていく。

図-1 蓄電付太陽光発電システム   図-2 変換機と蓄電バンク部
【図-1 蓄電付太陽光発電システム】   【図-2 変換機と蓄電バンク部】
3.蓄電機能付風力発電システム

 風力発電はその出力が風速の三乗に比例するため、出力変動が極めて大きく、電力系統に大量に接続した場合、周波数変動など、電力系統の運用に支障を来すことが懸念されている。
  これらを解決するため、風力発電に蓄電ユニットを付加して、出力の平滑化など、電力系統が不安定にならないような分散エネルギーシステムを開発し実証実験を行った。
  本システムは、NEDOの次世代蓄電システム実用化戦略技術開発「系統連系円滑化蓄電システム技術開発」として、5カ年計画で北陸電力などと実証実験を進めたものである。【図-3】【図-4】
  本システムの蓄電ユニットには「リチウムイオン電池」を採用しているが、電池セルはバッテリーマネジメントシステムを用いて監視・制御され、電圧バラツキの抑制および電力変換器との連系制御を行っている。
  電力変換部は、電力系統に瞬時電圧低下が発生した場合に、蓄電部に蓄えられた電力で継続運転する機能や、系統電圧を維持する機能など、スマートグリッドの構成要素として期待される将来の再生可能エネルギーの変換器が備えるべき機能を先取りして実現している。

図-3 系統円滑化蓄電システム   図-4 北陸電力志賀風力発電設備
【図-3 系統円滑化蓄電システム】   【図-4 北陸電力志賀風力発電設備】
4.太陽光発電、蓄電池と充電設備の組み合わせ例
 

 蓄電機能を持たせることによって受電容量に制約があっても急速充電が可能な電気自動車用充電システムを紹介する。
 急速充電システムは、その電源容量が大きいため、場合によっては高圧受電をする必要があり、受電設備や配線工事の費用が設置者にとって大きな負担になる。大容量の交流系統が準備できないが、急速充電を必要とする高速道路のサービスエリア向けとして、太陽光発電と大容量の蓄電池を組み合わせた急速充電システムを開発し、名神高速道路の吹田SAに設置した。【図-5】このシステムでは、電力を蓄電池に充電し蓄電池から急速充電することで、急速充電器容量のわずか6%の受電容量でも急速充電を行なえる。東日本大震災直後にガソリンの不足により、物資の輸送や人の移動が円滑に行なえなかったことは記憶に新しいが、吹田Aに設置したシステムであれば、太陽光で発電された電力を蓄電することで、電力系統が途絶えても独立運転が可能になり、災害時の非常用電源、非常用急速充電器としても利用でき、電気自動車による物や人の輸送が可能になる。今後、こうしたシステムを高速道路のサービスエリアなどに設置することで、再生可能エネルギーの利用促進とCO2ゼロ走行の電気自動車の普及、及び非常時の電力供給などに貢献出来ると期待している。

   
 
図-5
【図-5 名神高速道路 吹田SAに納入した太陽電池・蓄電池併設の
低圧受電型EV用急速充電システム】
   
5.まとめ

 東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故を契機に電力不足が全国規模で懸念される今日、節電、省エネ、そして再生可能エネルギーの拡大などの緊急課題に直面している。当社は、再生可能エネルギーと蓄電を組み合わせて電力のピークカットを行なったり、太陽光発電と蓄電システムを組み合わせたEV用急速充電器など、電力不足や、非常時の電力確保、さらにEVのインフラなどに活用できるシステムを実証実験等ですでに実現している。今後のインフラとして、CO2削減に加えてさまざまな用途に活用できる可能性を秘めており、電気自動車の普及とそのインフラの整備に貢献することで、低炭素社会実現と安心な社会の実現を加速する一助となることを願っている。

ニチコン株式会社 NECSTプロジェクト 古矢 勝彦
2011年7月4日付 電波新聞掲載
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