「電気自動車用急速充電器の技術」
 
1.まえがき

 ニチコンは、「より良い地球環境の実現に努め、価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献します」を経営理念に掲げており、深刻な社会問題として議論される地球温暖化の解決に挑戦すべく、エネルギーの安定供給と環境保護の両立を目指し、経営トップ直轄プロジェクトとしてNECST(Nichicon Energy Control System Technology)プロジェクトを2010年3月15日に立ち上げた。
 エネルギーの安定供給と環境保護の両立を実現することが、東日本大震災後、より切実かつ急務との認識のもと、新たな商品の提案と開発を加速している。その取り組みの一つとして電気自動車(EV)の普及に注力している。現在、日本で一般販売されている量産EVの全てにニチコンの車載充電器が採用されている。一方でニチコンは充電インフラとして、EVに充電する設備も手がけており、充電機器とそれを支える技術を紹介する。

2.EV/PHV用充電器の種類

 現在市販されているEVで遠出しようとすると出先での充電が必要になる。その場合、車載充電器による充電では、200Vでの充電でも7時間と長時間の充電が必要なため、出先での充電は、30分程度で充電できる急速充電器が欠かせない(表1参照)。


【表1.EV/PHV用充電設備の種類と充電時間】
充電設備の種類 普通充電 急速充電
コンセント ポール型
普通充電器
100V 200V 200V
100V 100V 100V 100V
想定される
充電場所(例)
プライ
ベート
戸建住宅・マンション、ビル、屋外駐車場等 マンション、ビル、屋外駐車場
(ごく限定的)
パブリック カーディーラー、コンビニ、病院、商業施設、時間貸し駐車場等 道の駅、ガソリンスタンド、高速道路SA、カーディーラー、商業施設等
充電時間 航続距離
160km
約14時間 約7時間 約30分
航続距離
80km
約8時間 約4時間 約15分
充電設備本体価格例
(工事費は含まない)
数千円 数十万円 百万円以上
「電気自動車・プラグインハイブリッド自動車のための充電設備設置にあたってのガイドブック」
2010年12月 経済産業省、国土交通省資料より抜粋。
3.急速充電器の働きと規格

 インフラとして急速充電器は、交流を直流に変換する大容量電源であり、直流500Vという高電圧を出力するため、特別のコネクタで車に接続する。また、車に搭載されたリチウムイオン電池の状態は、バッテリーマネジメントシステム(BMS)が常に監視して安全性や信頼性を確保しており、急速充電器は、BMSと通信をしながら充電する(図1参照)。
   このBMSと急速充電器の通信プロトコルの共通化を車メーカ、電力会社、充電器メーカなどで構成するCHAdeMO(チャデモ)協議会が中心になって取りまとめており、現在量産されているEVおよび今後国内メーカが発売するEVの急速充電方式の事実上の標準になっている。
   チャデモ協議会では、これを世界の標準にしていくことを目指して国際標準化機関に働きかけており、欧米の車メーカにおいてチャデモ協議会が決める仕様を採用する傾向が強くなってきている。また、欧米に設置されている急速充電器もチャデモ協議会に参加している欧米メーカ製や、日本製が多くなっている。

【図1.急速充電器の働き(CHAdeMO規格)】
図-1
CHAdeMO協議会Webサイトhttp://www.chademo.com/jp/index.html掲載資料を元に
ニチコンで作成。
4.当社超小型急速充電器の紹介
 

 今回開発した超小型急速充電器の最大の利点は、従来の約1/2の設置スペースと約1/3の質量にすることで、基礎工事の費用を抑え、設置されるお客様の負担を総合的に軽減できることである。さらに車載充電器で培った技術を応用し、ユニット化することで高信頼性と高生産性を同時に達成し、充電インフラの整備に貢献できる。

 この急速充電器の特長をまとめると下記のようになる。
● コンパクト設計、小型軽量により設置場所を選ばない。
● 車載充電器で培った技術を応用し、高信頼性と高生産性を同時に達成。
● ユニット構成によりメンテナンス性が良い。
● 大型液晶パネル表示と対話型操作で使用者に優しい商品。

   
 
図-2
【図2 超小型急速充電器】
   
5.充電器の使い方

 EV/PHV用の充電器の使い方は、いたって簡単でしかも安全である。充電用コネクタを駐車した車のインレットに差込み、充電器側のスタートボタンを押すだけで充電が開始される。差し込み方は、図3に示すようにガソリンの給油に似た差し方で、ロック機構のついているものがほとんどなのでロックされたかどうかを確認するだけである。

   
 
図-3
【図3.充電コネクタの接続】
   

充電が完了すると、充電器側の操作画面で教えてくれるため、その画面に従って、コネクタを外して操作を終えることになる。もし、満充電までの時間が無い場合でも、途中で充電をストップして充電を終了することもできる。

   
6.まとめ

 輸送部門におけるEV/PHVなどについては、今回の東日本大震災を契機に導入する企業や、個人が増えると予想される。CO2ゼロの走行ができるEVは、小型大容量の電池と、パワーエレクトロニクスの発達により小型軽量の車載充電器が開発され、一般家庭で充電できるようになったことで、一般ユーザに身近な存在となった。さらに、遠出の場合に必要なインフラとしての急速充電器も、日本発のチャデモ仕様が世界で多く使われ始めている。当社が車載充電器で培った技術を応用して開発した超小型急速充電器は、設置面積を従来比半分にでき、工事費用を抑制でき、電気自動車の普及とそのインフラ整備に貢献することで、低炭素社会実現と安心な社会の実現を加速する一助となることを期待している。

ニチコン株式会社 NECSTプロジェクト 古矢 勝彦
2011年10月6日付 電波新聞掲載
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