「電気自動車用急速充電器の最新技術動向」
 
1.まえがき

 ニチコンは、「より良い地球環境の実現に努め、価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献します。」を経営理念に掲げており、深刻な社会問題として議論される地球温暖化の解決に向け、エネルギーの安定供給と環境保護の両立を目指し、経営トップ直轄プロジェクトとしてNECST(Nichicon Energy Control System Technology)プロジェクトを2010年3月に立ち上げた。
 東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故以降、エネルギーの安定供給と環境保護の両立が、より切実かつ急務であると社会の意識も大きく変化してきている。こうした状況を受けてニチコンでは、EV関連機器やインフラである急速充電器の開発を加速している。現在、日本で一般販売されている量産EVの全てにニチコンの車載充電器が採用されており、その実績と技術を急速充電器に応用することで、画期的な超小型急速充電器をラインアップしている。充電インフラとして、EV用急速充電器とそれを支える最新技術を紹介する。

2.急速充電器の働きと規格

 インフラとして急速充電器は、交流を直流に変換する数10kWの大容量電源であり、しかも直流500Vという高電圧を出力するため、特別のコネクタで車に接続することでその安全を確保しつつ、確実に大電流を車のリチウムイオン電池に供給している。一方、EVに搭載されたリチウムイオン電池の状態は、バッテリーマネジメントシステム(BMS)が常に監視して安全性や信頼性を確保しており、急速充電器は、このBMSと通信をすることでその安全を確かめながら充電する(図1参照)。
 このBMSと急速充電器の通信プロトコルの共通化を車メーカ、電力会社、充電器メーカなどで構成するCHAdeMO(チャデモ)協議会が中心になってとりまとめており、現在量産されているEVおよび今後国内メーカが発売するEVの急速充電方式の事実上の標準になっている。
 チャデモ協議会では、これを世界の標準にしていくことを目指して国際標準化機関に働きかけており、欧米においてもチャデモ協議会が決める仕様で急速充電器を商品化する電源メーカが既に数社ある。欧米に設置されている急速充電器もチャデモ協議会に参加している欧米メーカ製や、日本製が増加している。

【図1.急速充電器の働き(CHAdeMO規格)】
図-1
CHAdeMO協議会Webサイトhttp://www.chademo.com/jp/index.html掲載資料を元に
ニチコンで作成。
3.当社超小型急速充電器の紹介
 

 当社は、現在市販のEV用車載充電器を全て供給しており、バッテリーとの通信ノウハウ等、急速充電器と多くの共通点があり、そのことを急速充電器開発に活かして世界最小、最軽量の30 kW、20kW超小型急速充電器を8月に商品化した。また、12月には正面の形状や使い勝手を共通化した50kWも商品化し、ラインアップを充実した。これら電源の最大の利点は、従来の約1/2の設置スペースと約1/3の質量(当社従来品比)にすることで、基礎工事の費用を抑え、設置されるお客様の負担を総合的に軽減できることである。これを実現できた理由としては、車載充電器で培った技術や、部品を活用し、ユニット化することなどで高信頼性と高生産性を同時に達成したことが挙げられる。
この急速充電器の特長をまとめると下記のようになる。
● スリムでコンパクト設計、小型軽量により設置場所を選ばない。
● 車載充電器で培った技術を応用し、高信頼性と高生産性を同時に達成。
● ユニット構成によりメンテナンス性が良好。
● 使用者に優しい大型液晶パネル表示と対話型操作。
● 20kWから50kWまで正面の寸法とデザインを共通化し、内部ユニットも共通化している。
● 一般社団法人 次世代自動車振興センターの補助金対象機種に認定。

   
 
図-2
【図2 超小型急速充電器】
   
4.充電器の使い方

 EV用急速充電器の使い方は、いたって簡単でしかも安全である。充電用コネクタを駐車したEVのインレットに差込み、充電器側のスタートボタンを押すだけで充電が開始される。差し込み方は、図3に示すようにガソリンの給油に似た差し方で、ロック機構のついているEVがほとんどなのでロックされたかどうかを確認するだけである。

   
 
図-3
【図3.充電コネクタの接続】
   

充電が完了すると、EVからの指示で充電が停止し、充電器側の操作画面に表示されるため、その画面に従って、コネクタを外して操作を終えることになる。もし、満充電までの時間が無い場合でも、途中で充電をストップして充電を終了することもできる。

   
5.まとめ

 EVは、将来の自動車であると言われてきたが、経済性や、走行距離などの制約により実用化にはガソリン車の後塵を拝してきていた。しかしCO2ゼロの走行ができるEV は、近年小型大容量の電池と、パワーエレクトロニクスの発達により小型軽量の車載充電器が開発され、一般家庭で充電できるようになったことで、一般ユーザに身近な存在となった。さらに、遠出の場合に必要なインフラとしての急速充電器も、日本発のチャデモ方式が世界で多く使われ始めている。当社が車載充電器で培った技術を応用して開発した超小型急速充電器は、当社従来品と比較して設置面積を半分にでき、重量も1/3に抑えることで工事費用を低減でき、電気自動車の普及とそのインフラ整備に貢献することで、低炭素社会実現と安心な社会の実現を加速する一助となることを期待している。

ニチコン株式会社
2012年1月6日付 電波新聞掲載
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