「EV用急速充電・給電システムの最新技術動向」
 
1.まえがき

 地球温暖化対策のため、全世界で低炭素社会実現のさまざまな取組みが行なわれ、化石燃料に代わるエネルギーの開発が進んでいる。日本では東日本大震災を契機に、化石燃料を使わない原子力エネルギーを基本にした従来のエネルギー戦略から、太陽光発電など再生可能エネルギーを大幅に増加させる方針に戦略転換した。
  今年の夏は関西地区を初めとして全国的に電力不足が懸念され、昨年の関東地区の「計画停電」を想定した対応など、電力の供給不安が現実の問題となっている。
  再生可能エネルギーの比率が増加した場合でも、従来どおりに電力が安定的に供給されることが、市民生活の向上および産業界の発展に不可欠である。
  当面の方策としては、供給量に限界のある電力を「省エネ・創エネ・蓄エネ」の手法によって、効率的に運用して行かざるを得ない。特に「蓄エネ」製品ではリチウムイオン電池の活用によって、余裕のある夜間電力を蓄電して昼間に活用するピークシフト効果など電力の有効活用が提案されている。

2.電気自動車(EV)用急速充電・給電システム

1)EV用急速充電器
  日本は低炭素社会実現のため、世界に先駆けてEV開発およびEVの充電インフラ整備を推進してきた。急速充電器の規格化は東京電力が中心となりCHAdeMO方式を国際標準方式として提案してきた。すでに国内外のメーカーから製品が提供され、1,200基以上の充電インフラ整備がなされている。
  ニチコンは、EVに搭載されているリチウムイオン電池に充電する車載用充電器の開発メーカーであり、この充電器は現在量産されているEVのほとんどに採用されている。
  この技術を応用した超小型・世界最小サイズの急速充電器を4機種(50kW,30kW,20kW,10kW)ラインアップして、充電インフラ整備にも貢献している。

EV用急速充電器

<EV用超小型急速充電器>

2)太陽光発電および蓄電池併用型の急速充電システム
  50kWクラスの急速充電システムでは高圧受電が必要になるケースがあるが、ニチコンは低圧受電でも急速充電可能なシステムを開発し、名神高速道路吹田サービスエリアに設置した。このシステムは、太陽光発電とリチウムイオン電池とを組み合わせた急速充電システムで、停電した場合でも独立運転が出来、非常用電源としても活用できるメリットがある。

「創エネ」&「蓄エネ」型EV用急速充電 吹田SAシステム

<「創エネ」&「蓄エネ」型EV用急速充電 吹田SAシステム>

3.双方向充電・給電システム:「EVパワーステーション」

  ニチコンはEV搭載の大容量蓄電池を使って家庭に電力を供給する双方向充電・給電システム「EVパワーステーション」を開発した。いわゆるEVと家庭をつなぐV2H(Vehicle to Home)システムである。この「EVパワーステーション」は、安価な夜間電力を蓄電し、その電力を昼間の時間帯にシフトして家庭内電力に使用できる機能があり、昼間の電力ピークシフトへの貢献と同時に電気料金の節約が可能である。

「EVパワーステーション」の特長:

  1. ①給電機能によりEV搭載蓄電池を家庭用電力として活用し、スマートハウスのコンセプトに添って電力利用に貢献可能
  2. ②倍速充電機能
  3. ③夜に蓄電し昼に活用することにより、電力のピークシフトと節電に貢献 
  4. ④家庭の分電盤から直接給電するので、家庭内の電力需要にすべて供給可能
  5. ⑤日常生活に必要な家電製品を最大6kWまで稼動可能
  6. ⑥日産リーフのリチウムイオン電池(24kWh)の場合、約2日分の電力を供給可能
  7. ⑦CHAdeMO方式の充放電規格に準拠
  8. ⑧電力系統に逆潮流しないシステム構成

EVパワーステーション

<EVパワーステーション>

4.急速充電器標準化の動き

 日本は先進的なEV開発を行い、世界に先駆けて急速充電についてCHAdeMO方式の標準化を推進し、インフラ整備に先導的な役割を果たしてきた。
  国内外に1,200基以上の充電器が設置され、日米欧の企業が急速充電器を提供している状況にある。今年、欧米の自動車会社8社から新たにCOMBO方式が提案された。
  この新方式が各国のEV普及拡大にどのような影響があるのか、今後の車メーカーの動向に注意する必要がある。

5.家庭用蓄電システムとの関連

 移動する蓄電池であるEVを活用したV2Hシステムと定置型蓄電システムは補完関係にある。EVが自宅外にある場合を想定した場合、定置型蓄電システムを最適に活用して、最も経済的な方法をお客様が自動的に選択できるような仕組みを構築する必要がある。
  今後HEMS(Home energy management system)などを利用した最適な活用法を開拓する必要がある。

6.あとがき

 電力系統に接続される太陽光発電、蓄電池を用いた発電、燃料電池など分散型電源システムは、機器としては第一世代である。
  分散型電源システムの普及のためには、電力会社と再生可能エネルギーや蓄電システムを供給する産業界に共通する課題を解決して、スマートグリッド社会の実現に努力しなければならない。

ニチコン株式会社
2012年7月2日付 電波新聞掲載
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