「電気二重層コンデンサの最新技術動向」
 
1.はじめに

 電気二重層コンデンサは、機器や装置の小型バックアップ用途を中心に市場が形成されてきたが、近年は大型化・ユニット化技術の発展により回生エネルギーを利用する自動車、クレーン、フォークリフト、エレベーターなど市場が拡大しつつある。これらの用途は非常に大きな電流で充放電するため、コンデンサの内部抵抗をいかに小さくできるかが重要な課題になっている。
 一方、比較的小形のリード線形電気二重層コンデンサは、ゲーム機の電源バックアップ用やプリンタ、プロジェクタの補助電源用などに使用されるほか、近年世界的に普及が進むスマートメータの電源バックアップ用として注目されている。スマートメータは無線通信を行う際に瞬間的な出力を要するため、やはり抵抗の低い電源デバイスが求められる。また、スマートメータは屋外に設置されるため、電源デバイスには幅広い温度領域での安定稼働が求められ、特に低温時の抵抗特性の改善が求められていた。
 「UKシリーズ」は、低抵抗化と低温度での使用領域の拡大を図り、このような市場ニーズに応えるものである。

スマートメータ用低抵抗電気二重層コンデンサ「UKシリーズ」

スマートメータ用低抵抗電気二重層コンデンサ「UKシリーズ」

2.電気二重層コンデンサの原理

 電気二重層コンデンサの蓄電原理を図1に示す。一対の電極に電圧を印加すると、介在する電解液中のイオンが電極の極性を打ち消すように移動する。つまり、正電荷が印加された正極には負電荷のイオンが、負電荷が印加された負極には正電荷のイオンがそれぞれ吸着する。このように、電極と電解液の界面に正電荷層と負電荷層が相対する現象を電気二重層と呼び、充電時にはイオンが電極表面に吸着し、放電時には電極中の電荷を放出すると共に、電極表面のイオンが離れる。吸脱着するイオンの数が多いほど高容量となるため、電極には比表面積の大きい材料が使用される。充放電の過程で起こることは、基本的にイオンの吸着・脱離のみであり、非常に単純な現象である。単純な機構であるがゆえに、電気二重層コンデンサは高出力(短時間で容易に充放電可能)かつ長寿命(充放電に伴う劣化が少ない)を実現する。このような特長から、電気二重層コンデンサは高出力かつ充放電回数が多い用途に最適なデバイスであると言える。

図1 電気二重層コンデンサの蓄電原理

図1 電気二重層コンデンサの蓄電原理

3.構造

 素子構造は積層型と巻回型に大別される。積層型電気二重層コンデンサは、電極箔とセパレータを交互に積層した構造であり、各電極箔からリードタブを引き出すことによって電流経路を増やし、内部抵抗を小さくできる。巻回型電気二重層コンデンサは、ロール状の電極箔とセパレータを重ね合わせて巻き上げる製造方法(ロールツーロール)のため短時間で効率よく電極を対向させることができる。また構造安定性がよく高い信頼性を有する。当社は高い生産性や信頼性から巻回型を採用しており、小形のリード線形(φ6.3 × 9L 〜 φ18 × 40L)から大形のネジ端子形(φ35 × 85L 〜 φ63.5 × 150L)まで商品展開している。大形になるほど使用する電極箔の面積が増え、流す電流量も大きくなるため、リードタブを複数設けることで内部抵抗の上昇を抑えている。
一方、小形のリード線形電気二重層コンデンサはリード線が直接外部端子として機能する極めてシンプルな構造のため、複数のリード線を取り付けることが困難である(図2)。したがって前出の「UKシリーズ」の開発には、主に材料面において改良を実施した。

図2 リード線形素子の構造

図2 リード線形素子の構造

4.電極

 電気二重層コンデンサの電極には活性炭を使用している。活性炭にはヤシ殻炭、石油ピッチコークス、フェノール樹脂炭、ポリ塩化ビニリデン等数種の原料が用いられている。活性炭の賦活方法として、主にガス賦活とアルカリ賦活がある。アルカリ賦活は、ガス賦活に比べてコストは高いものの、微細で均一な細孔を得ることができ、容量が大きいことが特長である。しかし、活性炭の細孔径が微細になるほどそこに吸脱着するイオンの移動経路が制限され、結果的に抵抗が大きくなる。当社は抵抗特性とコストを重視し、ヤシ殻原料のガス賦活炭を電極活物質として用いている。
 活性炭の製造技術とともに電気二重層コンデンサの性能を左右する重要な要素技術として、電極箔の製造技術がある。電極箔は、電極材料をスラリー状にして集電箔に塗布する方法と、活性炭に導電補助剤とバインダーを加えてシート状にして接着剤で集電箔に接着する方法がある。一般的に、容量を重視する場合は厚膜化が可能なシート状電極を、抵抗を重視する場合は薄膜化が可能な塗布電極が採用されてきた。確かに、電極箔が薄い方が表面積を広く利用できるため低抵抗化できる。しかし、耐久性の面から見るとシート状電極の方が形状を維持しやすく、長期にわたって安定した抵抗特性を得ることができる。また、シート状電極は活性炭粒子間の空隙が広く電解液が浸透しやすいため、特に低温における抵抗特性は塗布電極より優れている。また、近年シート状電極の薄膜化技術が進んでおり、塗布電極なみの厚さでシートの作成が可能になってきている。このような背景から、当社では極薄のシート状電極を採用し、活性炭の細孔径や電極層厚み等各種パラメータを最適化し、従来電極の約1/2の低抵抗化を実現した。

5.電解液

 電気二重層コンデンサに使用される有機溶媒系電解液は、溶質として四級アンモニウム塩を使用するものと、アミジン塩を使用するものが一般的である。また、溶媒にはプロピレンカーボネート(PC)が使用される。四級アンモニウム塩もアミジン塩も、濃度を高くすることで電解液の抵抗を下げ、コンデンサの低抵抗化に寄与する。しかし、低温領域における塩の溶解性に関しては両者に大きな違いがある。例えば、四級アンモニウム塩として広く使用されているトリエチルメチルアンモニウム-テトラフルオロボレート(TEMA-BF4)は、1.8mol/Lの濃度では約-30℃で溶質の析出が起こる。一方、アミジン塩として代表的な1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-テトラフルオロボレート(EMI-BF4)は、2.0mol/Lの濃度でさえ-40℃においても溶質の析出は起こらない。
 上記の理由により、-40℃においても低い抵抗を維持するために、当社は電解質としてアミジン塩を採用した。
 溶媒はPCをベースとしながらも、低粘性の副溶媒を混合することでイオンの移動度を上げ、抵抗を下げる試みを行っている。低粘性溶媒として海外ではアセトニトリルが広く使用されているが、アセトニトリルは燃焼すると有毒ガスを発生する懸念があるため、当社では安全性や環境に配慮し、アセトニトリルを使用していない。副溶媒の一つとしては、ジメチルカーボネート(DMC)を使用しており、その混合割合によってコンデンサの内部抵抗に与える影響は変化する(図3)。他にも温度特性、耐久性、コストなど様々な要素を考慮し、副溶媒の種類と比率を最適化することで、従来電解液と比較して約2倍の電導度を持つ-40℃でも使用可能な電解液を開発した。

図3 DMCの溶媒比率がコンデンサの内部抵抗に与える影響 (-40℃)

図3 DMCの溶媒比率がコンデンサの内部抵抗に与える影響 (-40℃)

 上記のように「UKシリーズ」は、新規に開発した電極と電解液を採用することで低抵抗化を実現した。非アセトニトリル系では、リード線形電気二重層コンデンサとして業界最高の抵抗特性を実現し、現行品の「UMシリーズ」と同サイズ比で最大1/3の低抵抗化を達成した(図4)。また、同時に低温特性も大幅に改善し、現行品の下限カテゴリ温度は−25℃であったが、「UKシリーズ」は−40℃保証を実現した。
 当社は、電源バックアップ用への利用が進むリード線形電気二重層コンデンサの低抵抗品として新たにラインアップし、本年4月より量産開始している。
 電源バックアップ用としては、他にもドライブレコーダやストレージサーバー等にも好適で、二次電池からの置き換えによるメンテナンスフリー化や環境負荷の低減を図ることができる。
 さらなる用途拡大を目指し、今後は高温側の使用温度領域の拡大や耐電圧の向上に取り組んでいく。

図4 温度と内部抵抗の関係 UMシリーズ(現行品)とUKシリーズの比較

図4 温度と内部抵抗の関係
UMシリーズ(現行品)とUKシリーズの比較

表 UKシリーズ一覧
定格電圧 定格静電容量
(F)
ESR at1kHz
(mΩ
DCR
実力値(mΩ
ケースサイズ
φ D×L (mm)
2.5V
6 .8
75 85
12 .5 × 31.5
12
60 65
16    × 31.5
18   
55 55
18    × 31.5
27
40 35
18 × 40
ニチコン株式会社
2012年8月9日付 電波新聞掲載
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