「EVを支える最先端テクノロジー」
 
1.まえがき

 低炭素社会の実現のため、各国で環境問題に対する取組みがなされており、EV(電気自動車)やHV(ハイブリッドカー)の普及促進もその重要施策のひとつであり、日本はその先進的先導的役割を果たしてきた。経済産業省は2020年度に向けた成長戦略の中で「エコカー」について、普及目標として全世界予測台数390万台(EV:175万台、PHV215万台)とし国内の普及目標を20〜50%としている。(2015年:全世界台数61万台)
 一方、東日本大震災を契機に、化石燃料の使用を削減し、原子力エネルギーを基本にした従来のエネルギー戦略から、太陽光発電など再生可能エネルギーを大幅に増加させる方向に進みつつある。原発の見直しから電力不足が懸念され、夏冬の需要期には「計画停電」を考慮しなければならない状況にある。当面の方策としては、供給量に限界のある電力を「省エネ・創エネ・蓄エネ」の手法によって、わが国全体で効率的に運用して行かざるを得ない。特に「蓄エネ」製品ではリチウムイオン電池の活用によって、余裕のある夜間電力を蓄電して昼間に使用するピークシフト効果など電力の有効活用が提案されている。また、EVのリチウムイオン蓄電池を活用して家庭用の電力に供給できる世界初のV2H(Vehicle to Home)システムは、このような社会的な要望に応える製品である。EVを支える最先端テクノロジーとして、V2H、EV用車載充電器、EV用急速充電器および車載用コンデンサについて紹介する。

2.車載用コンデンサ

 当社はコンデンサを基幹事業としており、ガソリン車からEV/HV用のさまざまな用途に対応するコンデンサ商品群を有している。電装用ではエンジン周りなどのMPU基板実装用として、−40℃ 〜135℃ の広い温度範囲で低ESR特性を実現し、耐振動構造の特長を持つチップ形アルミ電解コンデンサ「CXシリーズ」などが多くの自動車メーカーに採用されている。
 EV/HVのモーター駆動インバータ用には、大形アルミ電解コンデンサが採用されてきたが、最近は、フィルムコンデンサが増加している。フィルムコンデンサでは、車種に合わせた形状と要求性能に合わせカスタム対応が可能な「EMシリーズ」が搭載されている。

<アルミ電解コンデンサCXシリーズ>

<アルミ電解コンデンサCXシリーズ>

 

<フィルムコンデンサEMシリーズ>

<フィルムコンデンサEMシリーズ>

3.EV用急速充電システム
<EV用超小型急速充電器>

<EV用超小型急速充電器>

1)EV用超小型急速充電器
  日本は低炭素社会実現のため、世界に先駆けてEV開発およびEVの充電インフラ整備を推進してきた。急速充電器の規格化は東京電力が中心となりCHAdeMO方式を国際標準方式として提案してきた。すでに国内外のメーカーから製品が提供され、1,600基以上の充電インフラ整備がなされている。ニチコンは、EVに搭載されているリチウムイオン電池に充電する車載用充電器の世界初の開発メーカーであり、この充電器は現在量産されているEVのほとんどに採用されている。
 この技術を応用した世界最小サイズの超小型急速充電器を4機種(50kW,30kW,20kW,10kW)ラインアップして、三菱自動車販売店様を初めとして、自治体が管理する施設、高速道路サービスエリアなどに設置して、充電インフラ整備に貢献している。

車載用「充電器一体型DC-DCコンバータ」

車載用「充電器一体型DC-DCコンバータ」

2)太陽光発電および蓄電池併用型の急速充電システム
 50kWクラスの急速充電システムでは高圧受電が必要になるケースがあるが、ニチコンは低圧受電でも急速充電可能なシステムを開発し、名神高速道路吹田サービスエリアに設置した。このシステムは、太陽光発電とリチウムイオン電池とを組み合わせた急速充電システムで、停電した場合でも独立運転が出来、非常用電源としても活用できるメリットがある。

4.双方向充電・給電システム(V2Hシステム)

 ニチコンは、EV搭載の大容量蓄電池を使って家庭に電力を供給する世界初の双方向充電・給電システム「EVパワーステーション」を開発した。
 いわゆるEVから家庭に電力を供給するV2H(Vehicle to Home)システムである。
 この「EVパワーステーション」は、安価な夜間電力を蓄電し、その電力を昼間の時間帯にシフトして家庭内電力に使用できる機能があり、昼間の電力ピークシフトへの貢献と同時に電気料金の節約が可能である。

「EVパワーステーション」の特長:
①夜に蓄電し昼に活用することにより、電力のピークシフトと節電に貢献。
②日産リーフのリチウムイオン電池をバップアップ用電源として活用。
③最短4時間でフル充電が可能。家庭の200V電源対比最大2倍のスピード。
④CHAdeMO方式の充電規格に準拠。
⑤電力系統に逆潮流しないシステム構成。

<EVパワーステーション>

<EVパワーステーション>

5.家庭用蓄電システム

 移動する蓄電池であるEVを活用したV2Hシステムと家庭用蓄電システムは補完関係にある。EVが自宅外にある場合や、EVを所有しない自宅を想定した場合、家庭用蓄電システムを最適に活用して、最も経済的な方法をお客様が自動的に選択できるような仕組みを構築する必要がある。今後HEMS(Home energy management system)などを利用した最適な活用法を創出する必要がある。

6.あとがき

 電力系統に接続される太陽光発電、蓄電池を用いた給電、燃料電池など分散型電源システムは、機器としては第一世代である。
 分散型電源システムの普及のためには、各電力会社と再生可能エネルギーや蓄電システムを供給する産業界が協力して、電力系統の安定化を図り「スマートグリッド社会の実現」に努力していくことが重要である。

ニチコン株式会社
2013年1月9日付 電波新聞掲載
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