「EV用急速充電器、充電・給電器の最新技術」
 
1.まえがき

 低炭素社会実現に向けた国家戦略である電気自動車(EV)市場の育成計画は、当初計画より数年遅れている。電気自動車(EV)普及のためには、①EVの価格、②一回充電おける走行距離の不足、③充電インフラの整備不足が解決されねばならない。これらの課題に対応するため、経済産業省主導で国の補助金が車両価格や充電インフラ整備のために使われてきた。今回はEV用急速充電器および充電・給電器の最新技術について述べる。

2.EV市場の概況

 経済産業省は次世代自動車充電インフラ整備促進のため1,005億円の補助事業を策定した。

  • ①EV価格は国のエコカーに対する補助金およびEVのコストダウンの努力により、日産リーフは、購入実質金額が300万円を切るようになった。
  • ②走行距離は一回の充電で日産リーフの場合、200km以上の走行が可能。
  • ③充電インフラ整備には、1,005億円の補助金を使い、全国に約11万箇所(普通充電器74,000基、急速充電器35,700基、新聞報道による)の充電ポイントを2年以内に設置する。
  • ④補助金は都道府県の「充電インフラビジョン」に沿った公共性を有する設備の場合は、本体+工事代金で最大3分の2の補助が受けられる。
    (該当しない場合は、本体価格の2分の1の補助など、4つの事業に区分けられている)
  • ⑤7月29日に自動車メーカー4社(トヨタ自動車株式会社、日産自動車株式会社、本田技研工業株式会社、三菱自動車工業株式会社)は、自治体が策定する「充電インフラビジョン」に合致していることを前提に、設置費用・維持費用の一部を負担することを発表して、充電器設置促進活動を推進することになった。
3.充電インフラビジョン

 自治体が策定する「充電インフラビジョン」は、公共性を最優先して、EVユーザーが利用する基幹道路などを中心に最適な配置がなされている。
 基本的には、次の3つの充電ポイントに分類して検討されている。

①基礎充電 マンション駐車場、月極駐車場など
②経路充電 サービスエリア、道の駅、ガソリンスタンド、コンビニなど
③目的地充電 テーマパーク、ショッピングセンターなど

 基礎充電においては行政区単位でビジョンを設定し、マンション・月極駐車場などへの導入を促進している。
 経路充電においては、道路交通センサスの調査をベースに充電器が必要と思われる箇所への設置を優先するビジョンの他に、観光振興等を目的とした誘導的な企画的設置ビジョンも見受けられる。観光地・温泉地や道の駅等の利用者を誘導する。
 目的地充電においては、テーマパークやショッピングセンターでの導入ビジョンが多く、流通業等でも積極的に充電器を導入する動きが出ている。

4.充電料金の課金システム

 設置済みの急速充電器の充電時の費用支払いは、EV普及の初期で実証実験段階にあるため課金されずに無料で開放している充電ポイントが多く、京都府などの自治体では無料で提供している。充電料金を「施設利用料」としての名目で課金するケースもあるが、まだ実証実験の状況に近い。
 急速充電器を設置した当社関連工場では、EVユーザーの便宜を図るため、現在は工場の稼動時間内では無料で提供している。
 一方、昨年11月から「合同会社充電整備推進機構」やジャパンチャージネットワーク(JCN)は、会員制をベースとした課金システムの実証試験を行なっている。今後の動きとして、フェリカカードをベースに用いた認証・課金システム付きの急速充電器を使用して、設置者がその利用料を決めて、利用者より回収された料金が設置者に還元される仕組みが採用されていくと予想される。利用者の認証方法も、普及度の高いスマートフォンや携帯電話によるQRコードの読み取りを使った認証など使い易さが考慮されている。

5.急速充電器の技術動向

 急速充電器は、10〜50kW出力まで、各社から多くのモデルが発売されている。
 当社も認証・課金システム付きの急速充電器を3モデル含め7モデルのラインアップしている。【写真1】利用料の回収方法として、コイン投入器を併設した急速充電器の製品を供給しているメーカーもあり、当面は認証機能付きの急速充電器と併用されて運用されていくと思われる。

【写真1】急速充電器 20〜50kW出力型/10kW 出力型

【写真1】急速充電器 20〜50kW出力型/10kW 出力型

6.電力料金

 急速充電器はAC200V 3相入力とAC200V 単相入力の2つタイプがある。
 電力会社との契約電力料金は、50kW未満の低圧受電が可能なタイプでも一日当たりの給電頻度により運用料金が変わる。30kW出力型の急速充電器の運用料金を現在の電気料金体系で試算した事例を次の表に示す。【表1】この表から判るように、一日の給電回数が一定回数を超えると3相タイプの方が割安料金となり、今後のEV普及から考えると3相タイプの方が主流になると考える。
 また50kW出力型は高圧受電契約をする必要がある。

【表1】急速充電器30kW出力型の運用料金事例

【表1】急速充電器30kW出力型の運用料金事例

7.双方向充電・給電システム

 昨年、ニチコンは日産自動車株式会社様とEVに搭載されたリチウムイオン電池を使って家庭に電力を供給するシステム「EVパワー・ステーション」【写真1】を共同開発して市場導入をした。この製品はEVから家庭に電力を供給する世界初のV2H(Vehicle to Home)システムである。このEVパワー・ステーションは、夜間の安価な電力でEVに蓄電し、その蓄電された電力を昼間の時間帯にシフトして家庭用電力として使用できる機能があり、昼間は系統からの電力消費を減らすことができ、月々の電気料金の節約が可能である。

「EVパワー・ステーションの特長」

  • ①EV搭載蓄電池を家庭用電力として活用し、スマートハウスのコンセプトに添った電力利用に貢献
  • ②EVへの倍速充電機能(AC200V接続対比)
  • ③家庭の分電盤から家庭内の機器に直接給電が可能
  • ④日常生活に必要な家電製品に6kVA(未満)まで供給可能
  • ⑤CHAdeMO協議会の充電規格に準拠
  • ⑥電力系統に逆潮流しないシステム構成

「EVパワー・ステーション コンセントモデル」【写真3】【図1】

 このコンセントモデルは、商品コンセプトとして「非常時給電機能を備えた倍速充電器」として開発された。
 主な特長:
  • 1. EVへの倍速充電機能(AC200V接続対比)
  • 2. 緊急時の給電確保で安心・安全
  • 3. 配電盤の設置費が安価(中継ボックス不要)

 防水型AC100V、50/60Hzアース付コンセント2口×2相(各相定格15A)を持つ製品である。
 ACコンセントに家庭用のAC100V機器を接続して活用できる。

【写真2】EVパワー・ステーション

【写真2】EVパワー・ステーション

【写真3】EVパワー・ステーション コンセントモデル

【写真3】EVパワー・ステーション コンセントモデル

【図1】EVパワー・ステーション コンセントモデル システム接続図

【図1】EVパワー・ステーション コンセントモデル システム接続図

8.急速充電器標準化動向

 日本は先進的なEV開発をおこない、世界に先駆けてCHAdeMO方式の急速充電方式を推進し世界の充電インフラ整備に先導的な役割を果たしてきた。
 この急速充電器は、すでに3,073基(日本1,858基、海外に1,215基)が設置されており、日米欧の企業が急速充電器を提供している状況にある。(脚注1)
 しかし、2011年に欧米の自動車会社8社から新たにCombo方式【写真4】が提案された。Combo方式は、CHAdeMO方式では別々であったAC入力とDC入力のコネクタを一体としたものである。現在提案されているCombo方式のコネクタは、欧州向けと米国向けで仕様が異なり、同一ではない。
 このCombo方式に準拠したEVは2013年秋に北米に導入するとの報道があり、今後のEV普及にどのような影響があるのか、今後の車メーカーの動向に注意する必要がある。
最近の情報では、欧州メーカー2社がEVを日本に導入する場合は、CHAdeMO方式を採用すると表明している。

【写真4】Combo 米国方式

【写真4】Combo 米国方式

9.まとめ

 低炭素社会実現のためEV普及に対する期待が大きい。しかしエコカーに対する取組みはガソリンエンジン車の低燃費技術開発、低燃費のハイブリッドカーの急速な伸びなどがあり、次世代自動車と期待されている燃料電池車などEVを取巻く環境は厳しい。
 しかし、EVはCO2ゼロの特長から必ず大きなマーケットシェアを確保していくと思われる。EVに付加価値をプラスするV2H製品もEVの普及にあわせて成長していくと推測される。またEVパワー・ステーションは、スマートハウス構想に連動した住宅エネルギーマネージメント(HEMS)との連携も必要である。
 さらに、スマートハウスにV2H製品が接続され、安定した電力の充電・給電システムの普及のためには、電力会社と再生可能エネルギーや蓄電システムを供給する業界が共通する課題を一緒に解決して、「スマートグリッド社会の早期実現」を図らなければならない。

脚注1)CHAdeMO協議会ホームページより。 2013年9月10日現在

ニチコン株式会社
2013年10月3日付 電波新聞掲載
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