「パワーエレクトロニクス用フィルムコンデンサの最新技術動向」

1. 緒 言

 社会インフラの充実とともに電力消費量が増大し、ますます電気エネルギーへの依存度が高まる中、電力に必須なパワーデバイスと電力変換機および制御を行うパワーエレクトロニクスは欠くことが出来ない技術である。更に電力分野に留まらず、産業機器分野(工作機械、ファン等)、自動車・車両関連分野(交通・輸送関連)から電子機器分野(家電製品、オフィス機器など)まで非常に広い分野で利用されている。
これらに共通するのはパワーエレクトロニクスによる省エネルギー化であるが、近年パワーエレクトロニクス機器に高耐電圧、低損失、高信頼性の特長を活かしたフィルムコンデンサが広範囲に検討・採用がされており、今回その最新技術動向についての一端を紹介する。

2.フィルムコンデンサの特長

 フィルムコンデンサは、誘電体として厚さ数μm〜数十μmのプラスチックフィルム(ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなど)を用いるが、特にパワーエレクトロニクス用途にはフィルムの表面に金属膜をパターン形成した蒸着金属タイプが使用されている。

この蒸着金属タイプの優れた電気特性と高い信頼性を下記に示す。

(1)優れた電気特性
・ 耐電圧性能に優れ、単器で1000V以上の高電圧対応が可能
・ 低損失のため、高リプル電流条件下でも使用可能
(2)高い信頼性
・ 自己回復機能(セルフヒーリング)による高い安全性
・ 高温環境下でも10年以上のメンテナンスフリー

3.フィルムコンデンサの適用範囲と開発動向

 現在、パワーエレクトロニクス用フィルムコンデンサに使用している誘電体には耐電圧性能、信頼性面よりポリプロピレンが主に用いられているが、近年のフィルム薄膜化と蒸着技術の向上により、急速にコンデンサの小形化が進んだことでその使用範囲が拡大している。
特に昨今、コンデンサの製品・技術開発が加速している分野としては下記が挙げられる。

◆ 産業機器分野 : 汎用インバータ、工作機械
◆ 自動車・車両分野 : 交通・輸送関連(EV/HV/PHV)
◆ 再生可能エネルギー分野 : 太陽光発電、風力発電

 上記分野で使用されるフィルムコンデンサの動向について以下に述べる。

(1)産業機器用・車両用コンデンサ
 高耐電圧化、高リプル電流化に加えて小形化という一見、相反する技術要素が求められる用途である。また近年は安全性・軽量化のため、内部に油を使用しない乾式タイプの要求が多くなっている。
 今回、車両・産業機器・環境機器分野を主用途として、小形化、高リプル電流化、高信頼性化に対応する直流用乾式フィルムコンデンサ「EJシリーズ」を開発した。
《製品特長》
誘電体の薄膜化と素子の収容効率向上により、当社現行品と比較して40%の小形化を達成するとともに、樹脂全モールド化(ケースレス構造)で低温度(-40℃)と高温高湿(85℃ 85%RH 1000h)に対応する。また環境に配慮した部材を採用している。
 1.小形化(当社現行品体積比:40%減)
 2.低温度対応(-40℃使用可能)と高温高湿対応(85℃ 85%RH 1000h 対応可能)
 3.保安機構付樹脂モールドタイプ
 4.メンテナンスフリー(長寿命化、高信頼性)
 5.環境対応(RoHS指令適合、オイルレス)
《製品仕様》
主な仕様を下表に示す。
項  目 仕  様
用  途 直流フィルタ用・平滑用
 車両用(主回路駆動用インバータ用、補助電源インバータ用等)
 産業機器用(主回路インバータ用等)
 環境機器用(太陽光発電、風力発電用等)
対応分類 カスタム対応品
周囲温度 -40〜+75℃
定格電圧 750〜3300VDC
静電容量 100〜18000μF
製品サイズ カスタムにて対応

直流用乾式フィルムコンデンサ 「EJシリーズ」

直流用乾式フィルムコンデンサ 「EJシリーズ」

(2)電気自動車(EV /HV/PHV)用フィルムコンデンサ
 EV・HV用では、平滑用途をはじめとしてスナバ用などフィルムコンデンサが幅広く採用されている。また、モータ駆動システムの高出力と高効率化のため高耐電圧化が進んでおり、合わせて高温度化対応も求められるため、フィルムコンデンサにおいても低損失化に加えて誘電体の薄膜化による小形化など、材料開発から最適構造設計まで一貫した製品開発が必要となっている。

HV用フィルムコンデンサ

HV用フィルムコンデンサ

(3)太陽光・風力発電用フィルムコンデンサ
 太陽光、風力発電などの再生可能エネルギー分野では長寿命・高信頼の直流フィルタ用コンデンサが強く求められているが、近年汎用部品として外装ケースに円筒形のアルミケースを用いたフィルムコンデンサが使用されるようになっている。またスタッドボルト固定構造により、円筒形フィルムコンデンサでは接地対応が可能になるとともに、放熱性が向上し、より高いリプル電流を許容できる等、信頼性向上を実現している。なお、単一の大型素子の構成により、現行の同定格コンデンサと比較してもコスト・生産性の面でも有利となる。

円筒形フィルムコンデンサ

円筒形フィルムコンデンサ


ニチコン株式会社
2015年1月13日付 電波新聞掲載
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