「チップ形アルミ電解コンデンサの最新技術動向」

1. はじめに

 アルミ電解コンデンサの特長のひとつは、比較的安価で大容量のコンデンサを提供できることにある。また、定格電圧の範囲も2〜700V前後と幅広く、その利便性から幅広い用途で採用されており、形状においても、チップ形、リード線形、基板自立形、ネジ端子形と様々である。【写真1】とりわけチップ形においては、需要が拡大している。拡大の理由のひとつとして、基板の小型化により部品の集積度が高くなるため、細かな部品の実装に適した基板面実装方式が採用されていることにある。リード線形の場合、基板への実装は手はんだ、あるいはフロー方式(はんだ槽に溶融したはんだ表層に基板を浸す)によるはんだ付けであるが、チップ形の場合は基板の接合部分にクリームはんだを塗布し、製品をマウントした後、高温の炉に基板を通すことではんだ付けを行うリフロー方式である。チップ形はリフロー方式による基板実装を目的とした形状である。
 これらチップ形のアルミ電解コンデンサの用途は、車載電装、フラットパネルディスプレイ、PCマザーボード、ゲーム機など様々であるが、ここ数年は特に車載電装用途への広がりが顕著であり、以下にチップ形アルミ電解コンデンサの最新技術動向を車載電装用の観点から述べる。

【写真1】 アルミ電解コンデンサ形状例

【写真1】 アルミ電解コンデンサ形状例

2.チップ形アルミ電解コンデンサの車載電装用への適用

 自動車の電装化が進んでいる要因のひとつに、自動車の省エネに対する社会的要求および環境への配慮から自動車の各機構を効率よく稼働させる電子制御が必要不可欠であることが挙げられる。これら省エネ、環境への配慮といった要求事項はさらにハイレベルなものとなり、それに伴い自動車に電子制御機器を組み込む、いわゆる自動車の電装化は今後ますます進んでいくことが予想される。ひとことに車載電装用といっても、自動車に搭載される機器は様々であり、それに付随する部品についても求められる性能は種々異なる。例えば、EV/HV(電気自動車/ハイブリッドカー)に搭載されるバッテリユニットの制御・監視においては、比較的定格電圧の高いアルミ電解コンデンサが求められる一方、エンジン周辺で作動するECU(エンジンコントロールユニット)は、高温に曝されるため高温度環境に対応できるアルミ電解コンデンサが求められる。また、寒冷地でも使用されるため低温雰囲気下における特性保証が要求される。加えて、電気特性は低ESR(等価直列抵抗)、高リプル電流対応が、構造面からはエンジンの振動に対応するための耐振動構造が必要になる。本節では、特にECUに求められる性能に対してどのようにこれら課題をクリアするかについて述べる。

(1)広温度(高温度-低温度)対応
 近年自動車において部品点数の削減、高収容化に伴いECUなどもエンジン近辺に配置される傾向にある。従って、ECUに搭載されるアルミ電解コンデンサにおいても高温度対応が必要不可欠になる。一般的に高温度で安定してアルミ電解コンデンサを使用可能とするためには、低蒸散性の電解液、封口ゴムの耐熱性が重要になる。アルミ電解コンデンサの構造上の特長として、陽極箔と陰極箔の間に介在させた電解紙に含浸した電解液の存在がある。電解液はイオン電導及び経時劣化による陽極酸化皮膜の修復の役目を担う重要な材料である。この電解液は電流が流れることによる電気分解および熱による蒸散で、徐々に封口部側から抜けていき、ある一定以上の電解液がなくなるとアルミ電解コンデンサの静電容量は急激に減少、tanδは急激に増加する。【図1】この現象は電解液のドライアップと呼ばれるもので、アルミ電解コンデンサの故障モード、寿命を決定する要因のひとつである。高温度になるほど電解液の蒸散は多くなるため、ドライアップも比較的短時間で起こる。また、高温度雰囲気下では一般的にゴムの劣化も進み、封止の役割が低下し、電解液の蒸散が加速する。一方、低蒸散の電解液は一般的に低温度では固化あるいはそれに近い状態になり、結果ESRが高くなる。従って、電解液は低蒸散性でありつつも、低温での特性が比較的良好なものが求められる。具体的な温度域は、現状−40〜+125℃(場合によっては135℃、150℃)が求められる。
【図1】 アルミ電解コンデンサの寿命末期特性挙動

【図1】 アルミ電解コンデンサの寿命末期特性挙動

(2)低ESR、高リプル電流対応
 アルミ電解コンデンサにリプル電流が流れるとコンデンサは発熱し、その発熱によって電解液の蒸散または劣化することにより、コンデンサの短命化につながる。リプル電流による主な発熱はジュール発熱によるため、アルミ電解コンデンサの抵抗が大きいほど同じリプル電流でも発熱は大きくなる。従って、比抵抗の低い電解液、部材を用いて低ESR化を図り、発熱による特性変化を少なくすることで、低ESR化や高リプル電流対応を実現している。
(3)耐振動
 エンジンからの振動に対する耐振動性要求を満たすため、チップ形アルミ電解コンデンサでは構造上主に次の2点の改良が加えられている。通常品と耐振動構造品の写真を【写真2】に示す。1点目は、座板の側壁の高さを調整し、コンデンサ本体の振動を抑制する。2点目は、座板に補助電極を設け、基板との固着性を高める。これらの改良により、現状30G(10〜2000Hz)の耐振動を保証している。

【写真2】 チップ形アルミ電解コンデンサの形状(通常品と耐振動構造品)

【写真2】 チップ形アルミ電解コンデンサの形状(通常品と耐振動構造品)

 ニチコンは上記要求を満足するUCD、UCM、UCL(105℃低インピーダンス対応)、UUE(125℃対応)、UCX(135℃対応)、UBC(150℃対応)と多種多様な製品をラインアップしてきたが、次節では2014年にアップグレードしたUCZ(125℃対応低温ESR規定品)に焦点をあてる。

3.125℃対応低温ESR規定品「UCZ」

 「UCZ」はこれまで製品サイズφ10×10Lいかの製品を提供してきたが、2014年10月に製品サイズφ12.5×13.5L〜φ18×21.5L品を新たに追加して製品体系を拡充した。

(1)特長
 エンジンルーム近辺および寒冷地での使用を前提に、高温度対応・安定した低温特性が求められる。それに対応すべく、低蒸散性かつ低温での安定した特性を保持することのできる電解液を当社独自に開発した。125℃雰囲気下で定格電圧を印加した時の特性変化(特性は常温に戻して測定)および−40℃ESRの特性変化の一例を【図2】に示す。

【図2】 「UCZ」特性の一例(25V/1000uF,φ12.5×13.5L)

図2】 「UCZ」特性の一例(25V/1000uF,φ12.5×13.5L)

※静電容量、tanδの測定はそれぞれの時間経過毎に常温に戻して特性を測定。
※ESRは-40℃で測定。

 一方、チップ形のアルミ電解コンデンサはリフローによるはんだ付けが前提である。製品サイズを大きくすると、リフロー時の熱の多くがアルミ電解コンデンサ本体に吸収され、端子部分にはんだを溶融するために必要な熱量が行き届かなくなり、基板への固着が難しくなる。また、本体に熱が吸収されるため、アルミ電解コンデンサ自身の特性に影響を与える。従って、チップ形のアルミ電解コンデンサはリード線形のコンデンサよりサイズが制限される。それゆえ、チップ形アルミ電解コンデンサの大容量化は大きな課題のひとつと言える。当社はこの課題を克服するため本シリーズにおいて、当社が開発した高容量電極箔と、薄手の低ESR性能を有する電解紙を採用することにより、当社「UUE」に比べ静電容量を最大4倍まで大容量化することに成功した。【表1】

【表1】 「UCZ」と「UUE」の同一サイズでの静電容量比較

【表1】 「UCZ」と「UUE」の同一サイズでの静電容量比較

(2)仕様
 「UCZ」の主な仕様を以下に記す。(括弧内は拡大された内容)ケースサイズはφ6.3×5.8L〜φ18×21.5L(φ12.5×13.5L〜φ18×21.5L)の9種類で、カテゴリ温度範囲は−40〜+125℃耐久性は125℃1000〜4000時間(φ8〜12.5は3000時間、φ16、φ18×16.5Lは3500時間、φ16、φ18×21.5Lは4000時間)、定格電圧範囲は10〜100V(25〜100V)、定格静電容量範囲は10〜3300μF(82〜3300μF)。

4.チップ形アルミ電解コンデンサの今後の展開

 チップ形アルミ電解コンデンサの今後の展開は自動車電装用を主として展開されていくと考えられる。冒頭でも触れたが自動車の電装化が進んでいるだけでなく、EV/HVに加えて、FCV(燃料電池自動車)などの電気で駆動する自動車が増えてくるなか、これらを制御する電子機器はますます重要な役割を担い、また、電子制御機器の種類も多様化すると予想される。よって、それら機器を構成する部品に求められる性能もより細分化されていくと考えられる。既に要求されている事項の一例を上げると、自動車に標準装備されつつあるアイドリングストップにおいて、車が停止するとエンジンが止まり、エンジンルームを冷却するファンも一時的に止まる。このとき、電装部品は走行時より高温度の雰囲気に曝される。従って、アルミ電解コンデンサにおいてはこの一時的な高温に耐えることが要求される。こういった自動車の動作、使用状況に合わせた細かな要求は今後増加していくものと思われる。
 以上、チップ形アルミ電解コンデンサの最新技術動向について述べた。当社はユーザーの期待に応えるため現状に留まることなく、新しい製品の開発を進めていく。


ニチコン株式会社
2015年1月29日付 電波新聞掲載
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