「チップ形アルミ電解コンデンサの最新技術動向」

1. はじめに

 昨今の自動車・車載関連市場は環境を意識したエコカーを前面に押し出し堅実な成長を見せている。その中でも電気自動車や燃料電池自動車は環境負荷が小さく経済的であることから普及が進んでおり、今後インフラ環境が整えばさらに拡大していくことが予想される。
 この自動車・車載関連分野の技術革新には搭載部品の「小形化」・「高効率化」・「過酷環境への対応」・「長寿命化」等の高性能化・高機能化が不可欠である。快適な車内空間の確保のため、特に省スペース化、高温過酷環境への対応が必須である。これは車載用途以外にも当てはまる内容であり、産業機器や情報通信分野でも高密度実装化が進んでいる。これらの背景を受け自動車・車載関連製品に搭載されるコンデンサ形状はリード線タイプから表面実装可能なチップタイプへ移行している。
 ここでは当社製品を例にチップ形アルミ電解コンデンサの最新技術動向について述べる。

2.アルミ電解コンデンサについて

 アルミ電解コンデンサは電極として表面積を拡大したアルミニウムを使用しており、他のコンデンサに比べ単位体積当たりの静電容量が大きい特長を有している。またアルミニウム自体が金属材料の中でも安価に入手可能なことから低コストかつ高容量のコンデンサが製造可能である。日常生活で使用するあらゆる電子機器に搭載されている汎用的な電子部品である。
 アルミ電解コンデンサの誘電体は高純度アルミニウム箔表面に形成された酸化皮膜(Al2O3)である。この酸化皮膜は比誘電率が高く、他の誘電体に比べ非常に薄く均一な層を形成可能であることから大きな静電容量を得るのに有利である。
 アルミ電解コンデンサの一般的な構造は陽極箔と陰極箔を対向させ、その間に電解紙を挟み円筒状に巻き取った素子へ電解液を含浸し、アルミケースに挿入し封口材で封止している。コンデンサの静電容量は箔対向面積に比例するため、箔表面を粗面化(エッチング)し、実効面積を拡大することで、より効率的に大きな静電容量を確保している。両極間に挟んでいる電解紙は絶縁物であり、電解液が含浸されていない素子は僅かな静電容量しか示さない。素子に電解液を含浸することで箔表面の誘電体が有効に働くのである。これは電解液が真の陰極の役割を果たしているからである。電解液の諸特性はコンデンサの特性に深く関わるため定格や温度、用途に合わせて適切なものを選択している。
 チップ形アルミ電解コンデンサはリフローにより基板実装されるため、高耐熱の電解液と封口材を使用する必要がある。また実装時の安定性や耐熱性向上の理由から樹脂座板が取り付けられている。この形状(JIS32形)はチップ形アルミ電解コンデンサの主流となっている。【図1】

【図1】チップ形アルミニウム電解コンデンサ構造図

【図1】 チップ形アルミニウム電解コンデンサ構造図

3.105℃小形・高容量品「UCV」

 先に述べたように車載関連分野に限らず産業機器や情報通信分野でも搭載部品の小形化・高機能化のニーズが高まっている。高機能化として長寿命化・低インピーダンス化が挙げられ、当社でも様々なシリーズをラインアップし対応してきた。今回は小形化に注力して開発を進め、製品単位体積当たりの静電容量が業界最高となる「UCV」を開発した。【図2】

【図2】105℃小形・高容量品「UCV」

【図2】105℃小形・高容量品「UCV」

 本製品はこれまで当社が培ってきた高容量化技術を集約し製品化に成功した。主な高容量化技術として構成部材の薄手化や電極箔の高倍率化、内部構造の最適化が挙げられる。  
@電極箔や電解紙の薄手化
コンデンサ素子は電極箔と電解紙を巻回した円筒状構造であり、電極箔と電解紙の薄手化によって素子体積の縮小が可能となる。言い換えれば同じ素子体積でより多くの電極箔対向面積を確保でき、さらなる高容量化を実現できる。
 
A高倍率陽極箔の適用
陽極箔の箔容量は箔表面積が広い程大きくなり、最新のエッチング技術を適用することで箔の単位体積当たりの静電容量を増大させている。
 
B内部構造の最適化
組立技術の向上により従来に比べ体積の大きいコンデンサ素子が収容可能となったことで電極箔対向面積をより拡大することができる。
上記技術を採用することで現行シリーズである「UCM」から1ランク高容量化を実現している。【図3】

【図3】「UCM」と「UCV」のサイズ別定格比較

【図3】「UCM」と「UCV」のサイズ別定格比較

 「UCV」のラインアップにより用途を問わず要望が多いセット機器の小型化・軽量化・員数削減に貢献できる。
 サイズ体系はΦ6.3×7.7L、Φ8×10L、Φ10×10Lの3サイズで構成しており、定格電圧範囲は25、35V、定格静電容量範囲は220〜1,000μFまでをカバーしている。

4.125℃低温ESR規定品「UCH」

 自動車・車載関連分野では快適な車内空間の確保や高効率化のため、エンジンルーム内やその周辺に電子回路を配置することが多くなっており、搭載部品には過酷な高温環境への対応が求められる。また寒冷地など低温環境下での使用にも適した製品が求められるため、幅広い温度範囲へ対応する必要がある。加えて長時間安定した製品特性を維持するといった高信頼性化も求められる。特に製品の等価直列抵抗(ESR)が重要視されており、当社では設計段階でこのESRの規定上限値が分かるように耐久試験後低温ESR規定品をラインアップし対応してきた。市場からはさらなる小形化・低ESR化の要求があり耐久試験後低温ESR規定品として業界最高レベルの「UCH」を開発した。【図4】
 Φ6.3×7.7Lサイズにおいて従来品に比べESRを75%低減したことが特長である。【図5】

【図4】125℃低温ESR規定品「UCH」

【図4】125℃低温ESR規定品「UCH」

【図5】「UCZ」と「UCH」のESR経時劣化比較

【図5】「UCZ」と「UCH」のESR経時劣化比較

 本製品は低蒸散性低抵抗電解液の採用、内部仕様の最適化により製品ESRの経時劣化を大幅に抑制している。
@低蒸散性低抵抗電解液の採用
従来の電解液は高温下において蒸散し易く、一定量蒸散すると製品特性が著しく劣化する。「UCH」では低蒸散性電解液を採用することで長時間安定した製品特性を実現した。また電解液の低抵抗化によりESR値の低減を計っている。
A内部構造の最適化
従来の設計思想を見直し最適な内部構造とすることで製品特性向上に寄与している。 「UCH」のラインアップによりセット機器の車載環境対応や省電力・長寿命化に貢献できる。サイズ体系はΦ6.3×7.7Lサイズ、定格電圧範囲は35V、定格静電容量範囲は47、100μFとしている。なお、当社製品は環境負荷に配慮した製品開発を進めており、「UCV」および「UCH」何れもRoHS指令に対応済みである。

5. アルミ電解コンデンサの今後の展望

 日常生活をより豊かなものとすべくエレクトロニクス技術は日々革新されているが、それを支えているのは電子部品の小形化・高性能化と言っても過言ではない。また、小形化・高機能化に加え、高信頼性化や低コスト化も進んでいる。
 自動車・車載関連分野では人にも環境にも優しい自動車を実現すべく、自動運転システム、燃料電池自動車等に続く様々な技術革新に伴い、電子部品に要求される特性も高度化・多様化が進むことが予想される。
 エレクトロニクス技術は常に進化しており、それに伴って市場ニーズも刻一刻と変化している。顧客要求への迅速な対応は勿論だが、次世代に必要になるであろう製品の開発「モノづくり」が今後重要になってくる。顧客目線で市場動向を見据え、最先端技術を生み出す製品を提供できるように開発を進めていきたい。今年ラインアップした「UCV」「UCH」もいずれはさらなる高機能化が必要となるであろう。技術力をさらに磨きあげ、これからの市場ニーズに応える製品を開発することで、より社会に貢献できる企業を目指していく。


ニチコン株式会社
2015年8月20日付 電波新聞掲載
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