「パワーエレクトロニクスを支える最新部品技術動向」

 当社はコンデンサ事業においてパワーエレクトロニクス分野に注力し、太陽光発電、風力発電やEV、HV、鉄道車両そして産業機器や家電向けインバータ用途などを中心に高い技術力と信頼性を強みに販売拡大に取り組んでいる。また、当社はそれらの市場に対してアルミ電解コンデンサとフィルムコンデンサの両方を開発、量産することができ、お客さまのご要求に応じてそれぞれの技術・製品を提供している。パワーエレクトロニクス分野に向けたアルミ電解コンデンサとフィルムコンデンサの最新技術動向について解説する。

アルミ電解コンデンサの市場要求

 大形アルミ電解コンデンサの主な用途は電源の入力電圧平滑用であり、スイッチング電源回路やインバータ回路に使用されている。回路の中でアルミ電解コンデンサは、安定した電気を供給するための重要かつ不可欠な部品である。
 大形アルミ電解コンデンサの市場要求としては、いずれの分野においても限られたスペースを有効活用するため、機器の小型化や省スペース化の要望があり、それに伴いアルミ電解コンデンサに対しても小形・低背化の要求が多い。
 最近では産業機器分野の省エネルギー化や高効率化のため、システムの高電圧化が進められている中で、インバータ電源等の制御回路に使用されるアルミ電解コンデンサに対しても高耐電圧化のニーズがあり、特に太陽光発電や風力発電用等、再生可能エネルギー関連分野においては高耐電圧品の要求が増加している。
 加えて、入力電圧が変動する様な電源事情の不安定な地域では、大きな電圧変動を想定した機器設計とする必要があり、コンデンサに対しても従来よりも高耐電圧とした製品の要求が増加している。
 これらの市場ニーズに対応するべく、小形化を図った「LGMシリーズ(業界最小)」、および高耐電圧化を図った「LGNシリーズ600V品(105℃基板自立形では業界最高耐電圧)」を開発し市場投入した。

(1)LGMシリーズ(業界最小の小形化品)

 アルミ電解コンデンサの静電容量はアルミ電極箔の表面積の大きさに比例する為、 アルミ電極箔は表面積を増やすためにアルミ箔の表面に電気化学的に凸凹を付けるエッチングと呼ばれる処理を施している。
 小形化品の開発ポイントとしては新開発のエッチング技術により実効表面積を拡大した高倍率陽極アルミ電極箔を採用したことである。
 エッチング技術による表面積を拡大する手法として、箔表面に施した穴(ピット)径の最適化を図ることで、ピット数の増大、およびピット長さを伸ばすことを可能にし、静電容量値の大幅な向上を実現した。

 加えて、素子を構成する電解紙に高耐電圧タイプを採用し、電解紙の薄手化をおこなった。電解紙の薄手化により、同一の静電容量においては素子体積を低減することができる。電極箔の高容量化と高耐電圧電解紙の採用により、現行シリーズよりも小形化を実現した。
 LGMシリーズは当社最小サイズであったLGLシリーズと比較し、最大で16%の体積削減を達成し、業界最小の小形化を実現している。

【図1 基板自立形アルミ電解コンデンサ「LGMシリーズ」】
業界最小サイズの小形化を実現

【図1】 基板自立形アルミ電解コンデンサ「LGMシリーズ」
業界最小サイズの小形化を実現

(2)LGNシリーズ600V品(105℃ 基板自立形では業界最高耐電圧)

 高耐電圧品の開発のポイントとしては、小形化シリーズと同様の電極箔と電解紙に加えて、電解液の性能が重要となる。
 本製品は、高耐電圧の酸化皮膜を形成した陽極アルミ電極箔および高耐電圧に対応した電解紙を採用した。また、長期安定性があり高電圧下での酸化皮膜修復能力を高めた電解液を新たに開発したことで業界最高電圧の600V定格を実現した。
 新たに開発した電解液は、現行電解液の成分構成比の最適化に加え、耐熱性と電導度に影響を与えない耐電圧向上剤を見出し、添加することで、現行比約20〜30%の高耐電圧化を実現した。

【図2 基板自立形アルミ電解コンデンサ「LGNシリーズ」】
業界最高の600V定格を追加しラインアップを拡充

【図2】 基板自立形アルミ電解コンデンサ「LGNシリーズ」
業界最高の600V定格を追加しラインアップを拡充

 このLGNシリーズ600V品は、複数個のアルミ電解コンデンサを直列接続して使用する場合において、コンデンサ員数の削減が可能となる。例えば、電圧1200Vに対して400V品を使用した場合には3直列が必要となるが、LGNシリーズ600V品では2直列での対応が可能となり員数削減による機器の省スペース化に貢献することが期待される。

【図3 電圧1200Vへの対応例】

【図3】 電圧1200Vへの対応例

2.フィルムコンデンサの市場要求

 産業機器用・鉄道車両用コンデンサは、高耐電圧化、高リプル電流化に加えて小形化という相反する技術要素が求められる用途である。また近年は安全性・軽量化のため、内部に油を使用しない乾式タイプの要求が多くなっている。
 今回、鉄道車両・産業機器・環境機器分野を主用途として、小形化、高リプル電流化、高信頼性化に対応する直流用乾式フィルムコンデンサ「EJシリーズ」を開発した。

(1)産業機器用・鉄道車両用コンデンサ

 誘電体(蒸着フィルム)の薄膜化と素子の収容効率向上により、当社現行品と比較して40%の小形化を達成するとともに、樹脂全モールド化(ケースレス構造)で低温度(-40℃)と高温高湿(85℃ 85%RH 1000h)に対応した。その他、蒸着フィルムに保安機構を採用することで、安全性を高くするとともに長寿命化を実現し、また環境に配慮した部材を採用している。

【図4 直流用乾式フィルムコンデンサ 「EJシリーズ」】

【図4】 直流用乾式フィルムコンデンサ 「EJシリーズ」


ニチコン株式会社
2016年7月1日付 電波新聞掲載
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